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触らぬ神に祟りなし
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翌日、ヘリで建設中のモジュールへと向かう佐伯と真白、そして前島兄弟の姿があった。現地には既に国のモジュール建設チームと、マモン対策室の人間がいる。真白はヘリの窓からモジュールを見た。上には建設途中のシンボルタワーが見える。このタワーは宇宙へと伸びる予定だ。タワーの宇宙エレベータで、そう遠くない未来に一般人でも宇宙旅行が出来るようになる。宇宙にある建設途中の新国際宇宙ステーションへ行けるようになる。ぼんやりと窓の外を眺める真白に佐伯が話しかけた。
「水上、もうすぐ着くよ」
「…はい」
真白は話しかけてきた佐伯に視線を移すと、佐伯はいつもの微笑みを浮かべ真白を優しく包む。その笑顔を見て、真白も佐伯に微笑みを投げ返した。
「…イチャイチャしてんなよ。ほれ、着陸だ」
前島がジト目で二人を見ながら呟く。ヘリポートは仮設で、他にも何機かヘリの姿が見える。真白の会社のヘリは保安部も含めて三機のヘリでやってきた。
ヘリから降りてビルの中へ入る。このビルも仮設のビルで、建設に携わる人間の休憩室や会議室、保安室などで使われていた。建物のエレベータホールで、見覚えのある人物がこちらを見ていた。鮫島だった。
「皆様、お疲れ様です。…水上くん、今回はおめでとうございます。拝見させて頂きましたが、素晴らしい図案ですね」
「…ありがとうございます。でもまだまだです…」
「ご謙遜を…コンペで選ばれたんですから、もっと自信を持たれたらいいでしょう」
「…そうですね…。でも、もっと素晴らしい線引きはたくさんありますから」
「ずいぶんと奥ゆかしいですね」
真白は鮫島に変に褒められて、困ったような笑顔を浮かべ少し俯く。話しながらエレベータに乗り、会議室へと通された。佐伯達は鮫島に首を傾げた。
「ここで暫くお待ちください」
「…鮫島さん、何かありましたか? 我々は今回、下見のみですよ?」
「ええ、そう伺っておりますよ。車の用意がまだでして…すみませんね」
「…へぇ? 車の用意がねぇ…?」
「…そう訝しげに仰らないでくださよ。本当の事ですから」
佐伯と前島、そして鮫島が見つめ合っている。険悪なムードとまではいかないが、それは佐伯がいつもとかわらない微笑みを浮かべているからなのかもしれない。前島はもう眉を寄せて訝しげに鮫島を見る事を隠しもしない。それを見て、前島弟と真白は、目を合わせる。触らぬ神に、祟りなし。そう確認し、成り行きをただ黙って見ていた。
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