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7月30日のウワサ
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「なぁ、俺と窪田のことで、なんか噂が流れてたりするのか?」
俺は隣の席で作業する後輩の山田に問いかけた。
山田はパソコンのディスプレイから俺の方に視線を向けて、少し首を傾げた。
「噂…といえばそうなんですかね?」
「なんだよ」
「…いやぁ、以前は佐脇部長とロボ田さんが噂になってたんですよ」
「は⁈」
「それが橘さんにすり替わっただけなんで、気にすることはないんじゃないですか?」
「知らないぞ、そんな話!!!」
佐脇部長と窪田が⁈
確かに、佐脇部長は窪田の周りをうろつく俺にクギを刺すくらいには、窪田を可愛がっていた。
部署が変わっても、たまに佐脇部長が窪田と話しているのも見かける。
「ちょ…まてよ⁈え?…あの…えぇッ⁈」
なんだ?
佐脇部長と窪田は、噂されるような関係だったのか⁈
そして今は、俺と噂に…ってことは?
まさか、付き合っていることがバレてるということなのか⁈
「橘さん、ケータイ鳴ってません?ちゃんと仕事してくださいよ〜」
山田はニヤリと笑って、席を立った。
「ま、まて山田!もう少し詳しく!」
「忙しいんで、また後で」
山田はヒラヒラと手を振って部屋を出て行った。
あいつ、面白がってるな⁈
一刻も早く状況を理解しないと、落ち着かないじゃないか。
しかし携帯の着信に応答してからはトラブル対応に追われるし、山田は部屋を出てからしばらく戻ってこないしで、それ以上は何も聞き出せなかった。
噂…。
俺と窪田の。
興味本位で噂されるのなんて、俺はいくらでも我慢できる。
それにすべての人間が俺たちの事を理解するとも思っていないので、多少の誹謗中傷も受け入れられる。
だけど窪田は?
窪田はそんな噂が流れていることを知っているのだろうか。
アイツはいつも無表情だからふてぶてしく思われがちだが、本当は繊細でストレスを溜めやすい。
噂のことは知らないような気がする。
知っていたらもっと動揺しているはずだから。
「ううむ…」
仮に何も知らないとして。
窪田は今、新しい部署でいっぱいいっぱいだから、このまましばらくは知らないほうがいいだろう。
「………にしても」
佐脇部長?
いい人だけど、めっちゃオッサンじゃねぇか。
顔も性格も俺とはタイプが違う。
窪田の趣味ってバラバラなのな。
「…じゃなくて!」
俺はバリバリと頭をかきむしった。
どうしたものか。
最近は不本意ながらも、仕事のために窪田とは十分距離を置いているのだが。
さらに距離が必要なのか?!
それは嫌だ!
だけど窪田のことを思えば?
社内では我慢なのか⁈
「無理!無理!」
窪田を我慢するなんて!!!
「…あのー…橘くん」
「目の前にいても話せないのは俺の理性的にダメだ!」
「君、気は確かか?」
「うえあ⁈……課長!!!」
気がつくと、俺はフロア中から痛々しいものを見るような視線を注がれていた。
「…たった今、正気に戻りました」
俺よ、しっかりしろ。
穴を掘って潜り込みたい心境だ。
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