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8月2日のなんてことだ
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朝8時。
〝おはよう〟と、ひとことメールすると、窪田から20分後に返事が返ってきた。
〝昨日はすまなかった〟
〝だから気にスンナ。それより今日はどうする?〟
〝午後から終電まで空いている〟
〝朝までじゃないのか(´・Д・)〟
〝明日は月曜だろ〟
〝知ってる(モノマネ)〟
〝黙れ〟
「………」
窪田とのメールのやりとりに、俺は朝からニヤニヤしていた。
昨日は2人でドライブでもしようと思っていたのがズルズルと予定が伸びて、結局会えずじまい。
夜に電話してみると、窪田は苛立ちと落ち込みで、いつも以上に言葉が出てこないようだった。
今朝になっても謝ってくるなんて、窪田は生真面目というか気にしすぎというか…。
もしかしたら、落ち込み具合がいつもよりひどいのかもしれない。
俺たちはメールのやりとりを続け、午後にうちの近くのつけ麺屋で一緒に昼メシを食うことになった。
「それまで部屋の掃除でもしておくか」
そう思ってあたりを見渡したが、部屋はチリひとつ無い。昨日の時点で年末大掃除なみに部屋は綺麗にしていた。
冷蔵庫はビールと食材がたっぷり詰まっているし、洗濯物は乾燥機の中でぐるぐると回っている。
やることがないので、あとはのんびりテレビを観るかスマホをいじるか。
「休みの日まで、目を使いたくないんだけどな〜」
ここのところ、会社では黙々と新しいプログラムを組んでいて、目薬が欠かせないほど目を酷使していた。
俺はベッドに寝転がり、目を瞑った。
深呼吸もしてみるが、気持ちはソワソワとして眠れる気がしない。ため息と共に寝返りをうち、枕を抱きしめた。
本当なら、今頃俺は枕ではなく窪田を抱きしめているはずだったのだが。
「…………」
でもそれは仕方のないことで、スケジュールが変更しまくっているのを窪田自身が残念がっているんだから、俺に言えるような不満はない。
でも、引っかかっていることがある。
窪田が佐脇部長と噂になっていたことだ。
これだけはどういうことか聞いてみたいんだよな。
いつだったか、佐脇部長は俺に牽制かけてきたことがあったからな。
窪田を疑うわけではないが、上司が絡んでくるなら状況を把握しておきたい。
考え出すと気になって仕方がないし。
「…………………………あー!腐ってんな、俺!」
窪田は用事が済み次第、俺に連絡をくれる。
部屋にいてもロクなことがなさそうなので、俺はうだるような暑さの中、駅ビルの書店に向かった。
本は買ったばかりだったから、欲しいモノがあるわけじゃないけど。
なんとなく窪田が食いつきそうな猫の写真集や雑誌や、育て方の本から子供向けの絵本まで、あれこれとネコを見つけては楽しんだ。
そして結構な時間を潰したところで、窪田からの着信があった。
「もしもし、お疲れ」
「…………」
窪田の声は聞こえないが、かすかに街の雑踏が聞こえる。
「お前、今どこだ?用事済んだんなら、会おうぜ」
乙女な俺は、胸がドキドキしていた。
しかし電話の向こうからはなかなか声が聞こえなかった。
「窪田?どうした」
「……橘」
「おう」
「先、昼食をとっておいてくれ」
「ん?」
「すまない。遅れそうだ」
「…………マジか」
なんてことだ。
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