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8月2日のside窪田くん③
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俺は生まれて初めて5歳女児と2人でピザを食べている。
「美味しいね!」
「……」
俺はコクリと頷いた。
どうせならサンマの塩焼きとか刺身とか食べさせたかった。猫顔ならば似合うはずだ。
この子がひとりでついてきた事に気付くと、俺はすぐに秋元さんに連絡した。しかし、電話はまったく繋がらなかった。
なんとその時、妊娠中の奥さんが具合を悪くして倒れていたのだ。
秋元さんは子供と奥さんと一緒に救急車に乗り込み、連絡がついたのは俺が最初に電話してから40分後。
しかも慌てていた秋元さんは、連絡が取れるまで子供が一人減っている事にまったく気付いていなかった。
「ゴメンよ〜。姑さんが病院に来るまでうちの子見ててくれないか。そんなに時間はかからないから」
秋元さんは申し訳なさそうに言っていたが、こればかりは断れない。
「そんなに時間はかからないから」という言葉を信じることにして、橘には「先に昼食をとっていてくれ」と連絡すると、俺は5歳児の求めるままピザの美味い店に入って秋元さんを待つ事にした。
「わたしね、タマネギ嫌い」
「早く言え。ネコはタマネギを食べると中毒になるぞ」
俺はピザのトッピングからタマネギを取り除いて差し出した。
5歳の猫人間が大きな口を開けてピザを食べるのを確認すると、俺は腕時計に視線を下ろした。もう午後1時をとっくに過ぎている。
俺が病院まで送ってやるのが正解だったな。
落ち着かなくて、俺はまったく食が進まない。
ジンジャーエールで喉を潤すと、俺は橘に電話をかけてみた。
「……もしもし」
橘はすぐに電話に出てきた。
「窪田、大丈夫か?」
「こっちはもうすぐメシも食べ終わる。お前は食べたのか」
「俺?つけ麺大盛り食ってきた。で、秋元さんはどうなってんの」
「……連絡が、つかない」
「心配だな。やっぱり俺がそっちに行こうか」
橘の言葉に俺は慌てた。
「いや、いい。そこまで巻き込みたくない」
「バーカ、何言ってんだよ。俺が早く会いたいんだよ」
「…………」
自分の顔が真っ赤になった自覚がある。
目の前の5歳児が、俺の顔を不思議そうに見ているしな。
しかしその5歳児が、俺から視線をそらして叫んだ。
「あっ!パパー!」
振り返ると、秋元さんが汗だくで息を切らしながら駆け寄ってきた。
それを見つめながら、俺はスマホに向かって話しかけた。
「……橘、いま秋元さんが来た。子供を引き渡してすぐにそっちへ向かう」
「気をつけてこいよ」
俺は頷いて電話を終えた。
やっと、橘に会える!
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