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10月9日の新東京物流センター
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「…この建設会社、評判悪いですよ。なんか手当たり次第コンペに出てるけど、クレームも多いとか」
「とは言っても、もう決まったんだから、これで行くしかないよ」
今日は新東京物流センターの建設を依頼する会社が決まり、仕事が大きく進んだ。
建築会社について恐らくは俺以上に不本意に感じているだろうと思っていた春日さんは、意外とあっさりとしていた。
まぁ、春日さんの言うとおり、決まってしまったんだから変えようがないんだけれど。春日さんはネガティヴワードを一切言わないし、そんな素振りも見せない。
「まぁ、なんでも思い通りにはいかないものだよ。でも、ちょっと面白いことも思いついたんだ」
春日さんは人懐っこく笑って、サンドイッチにかぶりついた。
今日の俺たちは現東京物流センターで昼食をとっていた。新しい物流センター予定地と本社の中間に位置して、仕事をするには便利なのだ。
でもセンターには本社みたいな食堂が無いので、センターに出入りする弁当屋から、弁当やパンを買って昼食にする。
「面白いことですか…。俺、新しい物流センターには食堂作って欲しかったな。パートさんや取引先も出入りするから、需要あるんじゃないですか?」
「パート社員ね…。日勤は主婦が多いから、みんな弁当を持参してるし、リサーチしたら実際に良い数字は出なかったんだよ」
「マジですか。俺なら弁当より社食なのになぁ」
俺は弁当を眺めてため息をついた。
出来立てのあったかい昼メシは食ったら力が出るんだよな。良いアイディアだと思ったけど…。春日さんにつられて色々考えてみても、たいていはこんな結果で終わってしまう。
「あ、社食のことまで考えるなんて、もしかして橘くん…」
「はい?」
なんの話かなと思って、俺は瞬きして春日さんを見た。
春日さんもそんな俺を見て、一瞬で俺が理解できてないのを読み取った。
「なんでもない。勘違いだった」
「何ですか?めっちゃ気になるんですけど」
「ゴメンゴメン、機密事項だから」
「それ言われたら余計知りたくなるじゃないですか!」
「だから、ゴメンって。それより宿題を持ち帰って欲しいんだけど、ちょっと聞いてくれないか。実はね…」
この時の俺は、春日さんが言いかけていた言葉が大したことだとは思ってなくて、何も聞き返さなかった。
それでも、春日さんが後にこっそり教えてくれた時は、かなり驚いて、そうとう慌てた。
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