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好きな人の失恋は自分の失恋でもある。
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「あ、林檎」
いつかのように、図書室で会う草薙先輩。
手にしている本は...。
「ポエムの書き方?」
思わず草薙先輩を見上げると、目をそらされる。
「......俺ね、失恋したよ」
「!」
「告白するまでもなく、ダメだって分かった。その人はさ、前まで俺の事を好きだったんだ。でも俺はフったんだ」
草薙先輩が語るのは、宮下先輩のことだと何となく分かった。
「おかしいね、フってから好きになって。もう、手遅れだなんて」
後悔。
それだけが顔に出ていた。
「だからいっそのことポエムでも書いて発散しようかと思って」
弱々しく笑う先輩。
ねぇ、草薙先輩。
まだ僕の事は対象として見てくれないんですか?
「あずさ、先輩。梓先輩」
「え?」
「名前で呼ばれるの、嫌ですか...?」
「いや...ううん、びっくりして」
いきなり名前で呼べば、ポカンとする草薙先輩。
「僕、梓先輩が好きです。一つ、我儘言ってもいいですか...?」
「うん?俺に出来る事だったら」
どさくさに紛れて言った好きです、も軽く受け流されてしまった。
「名前で、呼んでみて貰え、ませんか...?」
かぁっと頰が熱くなる。
草薙先輩は少し考えた後、一言ポツリ。
「.....郁」
「あ、ありがとうございます」
「え、本当にこれでいいの?」
「いいんですっ!」
そう言ってまた、草薙先輩から逃げる。
後ろ手にドアを閉めれば、抑えてた思いが爆発する。
「ここで、告白したらっ....傷口に付け入るみたいじゃんかっ....」
ポロポロと、止まらない涙。
失恋したと言っている草薙先輩の目は、まだ愛おしいと全力で訴えていた。
「草薙先輩の...バカッ...」
僕に諦め方を教えてください、誰か。
好きすぎて、苦しいのです。
いい加減、気付いて下さい。
僕はずっと、待ってます。
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