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始まりの告白Ⅰ
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私にはずっと好きな人がいた。
彼の為なら自分を偽ってでも近づきたいし彼に好いて貰うためになら何だってした。
「好き……ですっ!! わた、わた私と付き合ってくださいッ……!!」
彼を呼び出して緊張でガチゴチに固まった身体を更に力ませて、私は彼にそう伝えた。
彼は驚きもせず、慌てもせず、特に反応を示すことなく、ただ申し訳なさそうに眉を下げてすんなりと答えた。
「悪いけど……俺、付き合うとかそう言うの考えてないんだ。」
「まさか好きな人がいるんですかッ!?」
「急にそれッ!?」
むむ、この反応はいると言うことか……?
「い、いないよ……。」
「じゃあお試し期間とかどうですかッ……!?」
正直言って自分が嫌になる。何てことを言い出すのよ私っ!
バカすぎるぅぅぅ!
彼の表情をちらりと窺うと、もんのっすごい嫌そうな顔で私を睨み付けていた。
「お、お……」
──oh……//////
そ、そんな冷たい視線で見下ろされたら私……!!
「俺、女の子って苦手なんだよね。悪いけど。」
「…………。」
彼の蔑んだ視線に悶えていた私は、彼の言葉を聞くなり口をあんぐりと開け放った。
驚きで口が閉じそうにない。
睨み付けている彼に視線を戻すと、彼は困ったように笑った。
「なるほど男好きか……。」
「はぁッ……!?」
私がそう呟くと、彼は全身を強張らせて青ざめる。
「だから女の子と付き合わないんですね?
かんわいい子や美人や癒し系やに告白されて、しかも男女一番人気の、この、ワタァシッ!! に告白されてもお断りだなんてそうとしか思えない……!
私マジ天才ッ!!
よっ! 類に見ないぞこんな素晴らしき天才ッ!! 付き合うべきだぞよ!」
「いや個人的に君のこと苦手だな……。」
「何でやねん!!」
でも、それはそれで複雑だ……。
彼は実際のところ否定していない。文句ありげではあったものの否定はしていない。これは問題である。
「で、男が好きなんですかどうなんですか?
あ、あれだ。トモくんとか好きでしょ?」
「……ッ!?」
彼はぎくりと肩を震わせて、ほくそ笑む私のことを睨み付けた。
「実はトモくんは私のことが好きなんです~この間告白されちゃったぁ!
けどもね、私は貴方が好きな、フォーリンラブブリーフなのでぇ、断りました……!」
彼は私を睨み付けていた目を更に鋭く尖らせて、まるで汚物を見るように軽蔑の色を示した。
でも、構わない。たまらなくドキドキするぅ~。
「お前、サイテーだな……相手の気持ち分かってんのか?
俺、お前みたいな奴がいるから女が嫌いなんだよ。」
強い口調でそう唱える彼は、可笑しいくらいに怒っていた。
普通ならスルーするであろう私の自慢話を、彼は、トモくん目線で説教し始めたのだ。
「何? トモくんはただの親友と思ってる君の隣で泣いたのかな? 苦しそうに嗚咽して、私のことを好きなんだと嘆いたのかな?」
「お前……ッ!!」
「君は私に同情しろとでも言いたいの? 悪いけど私には無理だよ。」
図星だったのだろう、彼はとたんに表情を曇らせて、歯を食い縛り俯いた。強く握られた両拳が震えている。
ああ、彼は私が憎いんだ。トモくんに好かれた私のことが。
好きになんて、なって貰える筈もない。彼が好きなのは男なのだから。
「同情する暇なんてない。私だって傷ついてるんだから。トモくんは大事な友達だった。もう元通りにはならないことだって知ってる。」
彼は我慢しきれなかったのか、心にもないことを口にした。
「……なら付き合えば良かったろ……!」
私はそれが苛立たしい。
私の隣でよく笑っていた彼の姿が浮かぶ。何度も何度も何度も、何度も。
「彼には君のことについて色々聞いてた。つまりトモくんは私が君を好きだと知っていて告白してきたんだ。バカだよね本当に……。」
「あいつをネタに俺をバカにしたと思ったら今度はあいつをバカにすんのかよ!」
彼は私の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らした。腹立たしい。なぜこんなに苛々しているのだろう。
なぜこんなに苦しいんだ。なぜ悪く言われないといけない、彼は私をフッた癖にトモくんのことばかり考えている。
なぜトモくんを話に持ちかける。なぜトモくんに反応する。
なぜ私にトモくんのことを思い出させるんだ。
「そうじゃないよ!! 黙れようるさいな……!! 言ってるだろ……っ、トモくんは大事な友達だ……!
トモくんがどんな気持ちで俺の話を聞いてたのか考えると……俺……!」
言葉が浮かばない。このモヤモヤした気持ちはきっと友達を失った辛さだけじゃ収まらない。
「俺も、告白しないとって……思って……。」
「何だよ、償いのつもりかよ……。呆れたぜ。」
彼は私の言葉に掴み上げていた襟を離して、私に冷たい視線を向けた。
──……ムカ、つく……ッ。
「違うって言ってんだろ!!
勇気を貰ったんだ、トモくんに!!
トモくんは俺にフラレる覚悟で、関係を変える覚悟で賭けたんだよ、俺がトモくんを意識するようになることを……!!」
「は、はぁ……お前、自意識過じょ……」
「そんなのも分からない癖にトモくんを分かったように言うなよ!! このハゲくそばかハゲ!!」
「急に幼稚だなおい……。」
彼に好かれるトモくんが羨ましい。
けど、彼にトモくんの何が分かるって言うんだ。そりゃ親友だし仲良いし知ってるかもしれないけど。
俺にとってトモくんがどんな存在だったか知りもせずに私を攻める彼が凄く嫌いだ。
「つぅかお前……さっきから思ってたんだけど、」
「何。」
「〝俺〟ってどう言うこと?」
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