アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
大好きな幼馴染みⅡ
-
「はぁあ~……?」
彼は眉をぐにゃんと歪な方向に曲げて、首を傾げる。
「何で俺がお前を口説く訳?」
不愉快な上に不思議そうな表情をしている彼の手は、ずっと俺の頬を撫で続けている。
その手の上に自分の手を重ねると、彼の手はびくっと震えて、彼の目は俺を凝視した。
手で押さえた彼の手に、思わず甘えるように頬擦りすると、
彼は顔を真っ赤にして、「何すんだよ……。」と震えた絞り出したような声で呟いた。
「こう言うことしないでよ。」
「は?」
「心臓爆裂して死んぢゃいそう……。」
「その表現やめろ。」
彼はぱっと手を退けて、目頭を押さえた。
「どうしたの?」
「いや……。別に。何でもない。」
そう言いながら睨んでくる彼の目は月光をキラキラと反射しすぎているようにも見えた。
……涙?
じっとそれを見つめていると、綺麗な瞳に虜になっていた。
気づくと顔を近付けていて、瞳の中まで見ようとしている。
何だろう、何だろう、何でこんなところまでそっくりなんだろうか。
「君の名前、聞いてもいい?」
「今頃? ちゃんと覚えられんのか?」
「うん。ちゃんと覚えようと思ったらね。」
覚えるも何も耳を通り抜けて行ったと言うか……。
「俺は紅州(ぐしゅう)だ。」
「え?」
「名前。」
「あ、いや、えっと……それ苗字だよね? 下の名前は?」
俺の瞳を同じように見ていた彼は、そっぽを向いて、また頭を掻き混ぜる。
「──う……」
「うんこ?」
「ブチ殺すぞテメエッ!?」
胸ぐらを掴み上げられ、再び近くなった彼の顔に胸の動悸が速くなった。
彼は俺の顔を見るなり、じっと見つめて、瞳の中まで覗こうとしてくる。
何でそんなに見てくるんだよ、俺の心の中でも読みたいの?
「公(こう)だよ……。下の名前……。」
「え、こーちゃん……?」
「あ、あいつじゃねえよッ!!」
「え? あいつ? あいつって……?」
彼は息を呑んで俺を見つめた。ずっと見つめたまま動こうとしない。
その割りには眼が震えていて、動揺しきっていた。
「だから……あいつだよ……。」
「俺の大好きなこーちゃん?」
「……っ。知るかよ……。」
何だろう。胸騒ぎが止まらない。
「こーちゃんなんでしょ……?」
「苗字ちげえだろ……。」
「何でそんなの分かるのさ。」
「勘だよ。」
「嘘だ。」
じりじりと詰め寄っていくと、彼は顔を逸らして引き下がっていく。
階段の端まで来て、コンクリートの低い壁に手をついて、逃げられなくする。
「あ、う……。」
「答えて。君は俺のこーちゃんなの?」
「誰がテメエのだよッ!?」
顔を逸らしたままの彼に額をくっつけて無理矢理こちらを向かせると、闇の中でも分かるほど真っ赤な顔で見つめてきた。
綺麗な瞳だった。
涙で潤った瞳を縁取る長い睫毛の間にきらきらと小さな無数の光の粒がある。
月明かりに照らされて薄茶色の瞳が金色に輝くように見えた。
知ってる、この瞳。この瞳は──……
「こーちゃん……。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 307