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saveⅦ
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彼は冷たい視線で、冷たい口調で言う。
──瞬間、全身に悪寒が走った。
上から降り掛かるような圧力で、何故か身体の震えが止まらない。そんな俺を見て、彼はくすっと優しく笑った。
「ちょうど近くに来たから寄ってみたんだ。」
その優しい笑顔が、悍ましいほど美しい。
真っ白な肌と髪が、夜中にもが関わらず、輝いて見える。
部屋の光に少しだけ照らされて、彼はVネックの黒いTシャツと黒に近い灰色のズボンを着ていることが分かった。
……Tシャツには『 I LOVE TOMOYA 』とデザイン性の高い文字と組み合わせで大きく描かれていた。
知り合いと同じ名前のそれが少し複雑だけど、そんな服を着てもオシャレに着こなす彼がまた凄いと思った。
「会ったことありましたっけ……?」
「ああ、1度だけ。……それで、少しだけ話がしたいんだ、今大丈夫か?」
「え、まあ……。」
少し不振に思いつつも、畑から離れて採った野菜を玄関に置いて、門扉を開ける。
外に出て、彼と互いに距離をつめる。
何か危険があれば大声で叫べばいい。
父さんも母さんもさすがに裸では出てこないだろうけど、朝喜は少しの悲鳴で出てくるくらい俺の声に敏感に反応してくれるから大丈夫だろう。
「……何ですか。」
「忘れてほしいんだ。」
「はい?」
警戒しながら真剣に聞いたつもりが、返答があまりに省略され過ぎていて間抜けな返事をしてしまった。
「あの、何を……?」
彼は獲物を逃がさないような視線で、じりじりと詰め寄ってくる。
……逃げられなかった。
美しすぎる彼から逃げるようなことが俺に出来ない。それが許されないほど、彼には独特な雰囲気がある。
そっと腰に手を回されて、一瞬、ドキッとする。
……ドクドクと心臓が鳴って、
恥ずかしさと、恐怖と、悲しさと、孤独感と──…………
普通は離れないとならない筈なのに、混ざり合った複雑な感情や感覚が、そこへ縛り付けた。
「それはもちろん───…………」
彼はそっと耳に唇を近づけて、妖艶な声で、優しく、甘く、言い聞かせるように囁いた。
『天川……朋哉のことをだ……。』
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