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好きな人Ⅶ
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「あ、アマカワくん? 大丈夫?」
「ごめん白舞……俺、お前のこと好きじゃなかった。」
「へ?」
……そ、それはまあ、別に構わないけども……。
頼むから蛭ちゃんの顔が歪んでいるのをどうにかしてくれ。
「も、もちろん、す、好きだけど……!!」
「どっち……?」
真っ赤になって言う彼を見ていると、こちらもつられて恥ずかしくなってくる。
「……俺、もっと好きな人がいてさ…………。
やっとその人のこと思い出せたんだ。今。全部分かった。」
アマカワくんは涙を拭って、まっすぐに俺を見つめた。
「白舞に惹かれたことも、俺が大好きでたまらない人も……。
でも、白舞を本当に好きだってことは変わりない。」
「……えっと、結局俺とその人どっちが好きなんだよ?」
──彼はもじもじと両人差し指を合わせて、こちらの表情をチラチラと窺う。
「どっちも好き……かな……?」
「そうなんだぁっ!」
「いいのかそれで……。」
蛭ちゃんに指摘されて困って笑っていると、突然手を握られる。
しっとりとした柔らかい、すべすべした感触だった。
肌の感じは女の子そのモノだけれど、手の大きさや骨格は男の子そのモノだ。
見ると、アマカワくんが顔を真っ赤にしていた。
やや俯き加減で手の甲で口元を隠しながら、恥ずかしそうにしている。
──そんなに恥ずかしがるなら握るなよ……。
「あ、あのさ、今日一緒に──」
『──トモオオオオオオオオオオオオオオ────ッ!!』
「「……え?」」「げ……。」
超高速でこちらへ走ってくる彼は、着いたとたんにアマカワくんに抱き付いた。
「な、何だよ公(こう)……」
「まさかお前、全部思い出して……」
「……う、うん。」
抱き締めたまま硬直して、俺を見るなり、彼はぴく、と頬を引きつらせた。
「俺も、思い出したんだ。」
「よ、良かったね公……」
彼の真剣な視線から逃れようと、顔を逸らすアマカワくん。
「遠回りしすぎた。ずっとそばにいたかった。」
「あ……や……その……///」
彼は俺の手を握っていたアマカワくんの手を無理矢理奪って握り締める。
「悪かった……。トモに沢山、酷いことをした……。許して欲しいとは言わねぇ。
……けど、これからずっとそばにいさせて欲しい。」
「こ、公……? あの……っ///」
蛭ちゃんと俺は顔を見合わせて、ごくりと、唾を飲み込んだ。
──何だか、〝コウ〟と呼ばれた彼が、凄く真剣で、凄く、意味あり気なことを言っているからだ。
……彼は片方の掌で頬に触れて、アマカワくんの顔の方向を自分の方へ向ける。
更に赤くなったアマカワくんのことを見つめながら、似たように頬を赤く染めた。
「好きだ。今でも……。」
「「え……」」
俺と蛭ちゃんは、ただただ、驚くことしか出来なかった。
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