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変えられなかった想い 6
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今、ベッドの上に君がいて。
君の右手を男が引っ張って、君を俺が抱きしめている。
こんな状態をどうしたら、抜け出すことが出来るだろうか。
俺は、脳みそをフル回転させて考えた。
この男は、考えがおかしい。まともに話し合いも出来そうにない。しかも、情事中だったため、梅村君は裸だ。このまま抱きかかえて外へ逃げるにしても、なにか覆うものが無ければダメだ。
「さあ、透君を俺に返してよ?」
ケラケラと笑う声が室内に響く。
くそ、こんな時にも俺は何もしてやることが出来ないのかよ。
”ドン!”
悔しさで、唇を噛み締めていると、玄関の方から扉を蹴る音が聞こえた。
誰だ?
目をやると、そこには……
「よう、若葉さんよ。」
今までにないくらい冷め切った表情をしている葉山と、怒りを露わにしている河崎がいた。
「お前ら……」
外から差し込む光が、そのまま俺の中の希望を現しているようだった。
「さっきは悪かったな、刹那。ちゃんとお前が勇気を出して告ったか見に来たんだが……正解だったようだな。」
葉山の後ろにいる河崎の手には、近くのスーパーの袋が握られていた。
「本当だぜ。セツと梅村の祝杯をしに来たってゆうのによ。」
葉山は、ボキボキと手を鳴らしてこちらに歩み寄る。それを見た若葉さんと呼ばれる男は梅村君の手を離して後退りをする。
「な、ぜ? 何故葉山君がここにいる?!」
「何故かって? あんたが梅村に変なこと吹き込んで起こした騒動だろ?」
「は?」
かなり動揺しているのだろう、声が裏返っている。葉山はその間もじわりじわりと距離を縮める。
「しらばっくれないでくれますかね? 俺、あんたのそう言うところが嫌いなんですよ、昔っから。何でもかんでも自分は悪くないって被害者面して。」
葉山は、最近身につけていた黒縁メガネを外して俺に託した。途端に、人間を殴った時の鈍い音が響く。
「あんたじゃ、梅村を幸せに出来ない。喜ばせるだけ喜ばせといてバックレるような奴に、梅村を渡さねーすよ。」
髪の毛を掴んで痛みで歪んだ顔を上へとやる葉山。
「……透君は……儚い人なのだから。……そうあるべきだったんだ。」
「まだ言うかよ。」「ぐはっ!」
「河崎とセツは知らなくてもな。俺は知ってんだよ。」
にやりと、葉山は笑った。
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