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刹那の日常 4
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一人教室に戻ると、河崎が待ってくれていた。
「どうだった?」
河崎は俺を見つけると、すぐさまそう訊いた。
「ごめん。一人にして欲しい。」
俺は誰とも話せる気分ではなかった。
「は?」
河崎は眉間にしわを寄せる。「お前さ、アドバイスしてくれた友人には結果を報告するものだろうが。」
「……そっか。」
「で? ダメだったのか?」
俺の様子からしてそう悟ったらしい。だが、俺と梅村くんは仲直りする以前の問題だったのだ。力なく笑って、結果だけを告げた。
「ダメだった。」
すると、河崎はため息をついた。
「お前、何したんだよ。」
「……キス。」
「それで、梅村の反応は?」
「揺らいでた。」
「は? じゃ、あともうひと押しじゃん。」
「ダメなんだよ。」
「ダメって、どうしてそう決めつける。」
「俺……」
そこまで言って、言葉に詰まった。
第一、梅村君が俺を浮気相手だと見ていたということについてどう説明をしようか。梅村君の印象を悪くはしたくない。
「なんだよ、はっきり言えよ。」
じれったくなったのか、河崎が俺を急かす。
飽きたんだよ。
さっき梅村くんから言われた言葉が頭の中でぐるぐる回る。
本心じゃないと思っていたけれど、梅村君に恋人がいることは本当のようだった。
あの時の君の悲哀に満ちた顔が、焼きついてしまっている。
俺のせいであんな顔をしたのかな。
俺といたら梅村君を苦しめてしまうのかな。
嫌だな。
「俺、梅村君と分かれる。」
「え?」
「梅村君には……恋人が、いたんだ。俺とは、さ、浮気だったんだよ。」
気づけば、俺は河崎にそう告げていた。
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