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真夜中の静かな住宅街に、一台の車が止まる。
「高堂さん、本当にありがとうございました」
家の近くで構わないと言ったのに、危ないからと家の前まで送ってくれた。
男の俺に危ないも何もないと思うけど..、優しさを向けられるのは悪い気はしない。
バッグを手に持って助手席の扉を開けようとした俺に待ったがかかった。
何事かと思えば、目線の先には気まずそうに目を泳がせているイケメン。
「その..よかったら連絡先教えてくれないかな?」
「え、」
「せっかく仲良くなれたんだし、また暇なときにでもどこか行こう」
「あ..っ、はい」
一瞬、びっくりした。
何だか口説かれてる女の人の気分を味わってしまった気がする。
高堂さんほどのイケメンに連絡先を訊かれるとそんな錯覚を起こすのかと内心笑ってしまいそうになるのを堪えながら、ポケットから携帯を取り出した。
「ありがとう。また連絡するね」
「はい、待ってます。送ってくれてありがとうございました!」
バイト続きで疲れていたから、ぶっちゃけてしまうと車で送ってもらえたのはすごく助かったのだ。
少し気まずかったけど案外楽しかったし。
..一緒に帰れてよかったと思う。
「あの、一つお願いがあるんですけど..」
「ん?」
図々しいって思われるかもしれないけど、気にして寝れなくなっちゃいそうだし..一応言うだけ言おうと思って..
「俺のこと、沢木さんには内緒にしておいてくださいね?」
「ん?あーっ。大丈夫だよ」
不安そうに見つめる俺に、爽やかに笑ってくれる。
この人には俺の気持ちバレバレだったみたいだけど、沢木さんにバレるのは流石に不味いというか..まだ心の準備ができていないのだ。
「じゃあ、あの、本当に今日はありがとうございました!」
「大丈夫だよ。気をつけてね」
気をつけて、なんて言われても家は目の前なんだけど。
心配性だなぁと笑いそうになりながら、軽い会釈をする。
「高堂さんこそ!じゃあ、おやすみなさい」
「っ、うん。おやすみ」
ばいばいと手を振るその仕草さえ様になるのだからイケメンというものは恐ろしい。
暫くの間遠くなっていく車の光を見つめてから、俺は玄関の扉を開けたのだった。
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