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「兄貴、これより前のアルバムどこ?」
リビングのソファに俺と並んで腰かける弟がアルバムを広げている。
その膝の上には、つい最近拾った黒猫。
夕飯の時に付けていたテレビで旅行番組がやっており、その内容が京都の仏閣巡りだった。
何ヶ所か修学旅行で訪れた場所が映っていて、昔懐かしさに弟が引っ張り出してきたのだ。
旅行会社に勤めているおふくろの職業柄なのか趣味なのか、昔よく俺たちの写真を撮ってアルバムに収めていた。
俺も弟も写真が嫌いだから俺達が大きくなった今、滅多にアルバムが増えることはないけど。
弟の中学時代の卒業アルバムを並んで眺めて、昔懐かしさに次々に昔のアルバムを引っ張り出していた。
俺は途中で飽きて、弟と猫だけで熱心に読み漁っていた。
アルバムはリビングのテレビの横の棚に綺麗に整列されている。
10年分だけ。
それ以前のアルバムはおふくろの部屋の押し入れにしまわれているはず。
「…なんで?」
「俺見たことないんだよ。」
弟が昔のアルバムを見たことがないのは当然だ。
俺とおふくろが意図的に見せないようにしてきたから。
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