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「ユウ、あんたお兄ちゃんになるのよ。弟ができるの。」
10年前、おふくろがそう言ってこの写真を渡してきた。
真っ白な布団で安らかな顔で眠る、幼い男の子。
小さい頭には包帯が巻かれていて、それが取れないようにネットのようなものを被せられていた。
綺麗。
それが、第一印象だった。
真っ黒の綺麗な髪。整っていてちょっと凛々しい眉。まつ毛が長くて、唇は綺麗な紅色をしていた。
色が白くて、今にも消えてしまいそう。
まるで穢れを知らない天使のよう。
ああ、そうだ。
あまりにも綺麗だったから返したくなくて自分で持っていたんだ。
「なんだ、ちゃんとまともなのあるじゃん。」
おふくろの持つ写真を弟が横から覗いた。
「俺の写真数が少ないし、あってもこんなんばっかりなんだよ。」
そう言って弟が一つのアルバムを俺に差しだしてくる。
どれもこれも、泣いているか泣きそうに顔を歪めているか、俺にしがみついて顔が写っていないか。
昔の弟の写真には必ず俺も一緒に写っている。
いつまでもそんなんだからおふくろが諦めてだんだん写真の枚数が減っていってしまった。
大きくなった頃の物も、無表情のすまし顔か、意図的に顔を隠しているか、若干不機嫌な顔か、非協力的なせいで盗撮っぽくなっているか。まぁ、それは完全にこいつが悪いんだけど。
「じゃあ今度写真撮りに行こうか。」
「は?」
俺の提案に、弟が怪訝な顔をした。
「写真、たくさん撮ろうな。」
「はぁ…。まぁ、いいけど。」
本当は嬉しいくせに、興味がなさそうな言い方をする。
素直じゃない。
そんなところが可愛いのだけれど。
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