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ベッドにもたれかかって胡坐をかいている状態で前で手を縛られ、目隠しをされた。
何やら物音が聞こえるけれど弟が何をしているのか全く見当がつかない。
俺の部屋は3階にあるから外の明かりが入りにくい。
コン、パン、パン、と音がするから暗闇の中弟も手探りで動いているのは分かった。
やがてジーという音がしてゴン、という鈍い音と、「痛てっ」と小さな声が聞こえた。
恐らくチャックの開閉の音で、鈍い音は弟が机でも蹴ったのかもしれない。わずかに振動があった。
「大丈夫?」
「………。」
声を掛けたが返事はない。
ぺたぺたという一定の音と、ゆっくりとした足音。
カチャッ……キィ…
「けーた?」
パタン。
とっ、とっ、と……。パチン。
どさっ
俺の住むアパートはワンルームで、玄関を入ると畳一枚分くらいの短い廊下がある。
右手側にユニットバスがあって、正面はベッドやらキッチンやらが一緒になっている部屋がある。
廊下と部屋を申し訳程度に仕切るドアが付いていて、もう古いのかそのドアは開閉の度にキィ、と鈍い金属音が鳴るのだ。
遠ざかっていく足音、鈍い金属音。
弟はこの部屋を出て行った。
トイレにでも向かったのかと思ったけれどそれならばすぐにユニットバスの戸が開く音がするはず。
ドアが開く音がしない代わりに先程とは少し早い足音が聞こえた。ペタペタという音は聞こえなかった。
外からの明かりは入りにくいけれど、玄関の方は踊り場の明かりが灯っているおかげで少しは視界がいいのだ。
何やらごそごそと物音がして、ギィィ……バタン。
先程よりも鈍く、重々しい音がして玄関のドアが開閉されたことがわかる。
ガチャ。トン、トン、トン、トン………。
高めの金属音がして、軽やかに響く足音が遠ざかっていく。
テレビの音もない静かな空間。
隣の奴も今日は外出しているのだろうか。
時折テレビの音が漏れてくるくらい薄い壁なのに、物音が全く聞こえて来なかった。
聞こえてくるのはブゥゥゥンという早いスピードで駆け抜けて行くエンジン音。恐らくバイクが近くの道路を走っていったのだろう。
広い道路とは少し離れたこの場所は閑静な住宅街、といういい方が似合うくらいに車の交通量が少ない。
おまけに3階だから外の音などあまり気にしたことがなかった。
今は何時で、どのくらいの時間が経過したのだろう。
まだ十分も経っていないのだろうか。1時間はこうしている気になってしまう。
弟は、どこへ行ったのだろう。
出掛けたと見せかけて実は家の中で俺の様子を窺っているのかもしれない。
視線を感じるような気がしないでもない。
「啓太…。」
小さな声で呼んでみるけれど虚しく闇に消えるだけ。
足は自由なのだから立ちあがることぐらいはできるのだが、真っ暗な空間がそうさせる気を喪失させた。
手も緩く縛られているようだから解こうと思えばできそうなのだが、その後を考えるとそれもできなかった。
俺はただ、じっと弟の帰りを待つことしかできなかった。
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