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2ページ目 18 弟side
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「おかえり、けーた。」
兄貴のアパートに戻ると兄貴は俺が出た時と変わらぬ姿でそこに居た。
簡単に解けてしまうくらい緩く縛ったのに手枷も目隠しもそのままだった。
こちらをちらりとも見ずに脱力してベッドに頭を預けていて斜め上を見ている状態。
つまらない。まだまだ余裕がありそうだ、と思ったけれどそうでもないらしい。
廊下と部屋を隔てるドアをパタンと閉めるとそれだけで兄貴は身体を硬直させた。
暗闇の中外からの明かりだけを頼りに冷蔵庫のところまで行き、買ってきた物を入れる。
さっきまで余裕の態度を見せていた兄貴がまわりをきょろきょろし始めた。
目隠しをしているから何も見えないと分かっているくせに。俺が返事をしなかったから不安に思っているらしかった。
音を立てないように机を移動させて兄貴の真ん前にしゃがむ。
そのことにも気付かない兄貴は右を見たり、左を見たり。
右はともかく、兄貴の左側にはベランダしかない。そんなところに俺がいるわけないのに。
ようやく諦めたのか、動きを止めてまた上を仰いでいる。足を組み直して片手で拳を作り、もう片方の手はその拳をきゅっと包み込んだ。
「…啓太、いないの?」
もぞもぞと足を動かしたり、落ち着きがない。
「…けぇた。」
ポツリと小さな声で俺を呼んだ。
だけどその後に言葉が続くことはなくそのまま黙りこんでしまった。
部屋に俺が居ないものと思っているらしく、何度も何度も啓太啓太とを俺の名を繰り返した。
ずっとこうして俺の名を呼びながら俺が帰って来るのを待ち続けていたのだろうか。
愛しさがこみ上げてくる。
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