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おふくろside
仕事を終えて帰宅すると、玄関で黒い猫に出迎えられた。
つい最近息子が拾ってきた猫。真っ黒で、毛並みはそこそこ良くて、目は澄んだ緑色をしている。
手を差し出すと濡れた鼻でクンクン匂いを嗅いで、ざらざらの舌で控えめにペロッと舐められた。
首を中指でくすぐるとチリチリと赤い首輪に付けられている鈴が鳴る。
うっとりと目を細めてもっととねだるように自ら指に喉を押し付けてきた。
こんなに人に懐いているのだから、前の飼い主は相当可愛がっていたのであろう。
ただこの猫、尻尾が短くて不自然に折れ曲がっている。
その不格好な尻尾を上から下へ半円を書くように勢いよく振り下ろし、ゆらゆら動かしながら上まで持ってきて、また上から下へ振り下ろすという不可解な動きをさせていた。
ガラガラ、と戸を引く音が聞こえてきて猫のご主人様が姿を現した。
「あれ、優子さん早かったね。」
表情一つ変えず言うのは息子の啓太。パジャマ姿で猫同様真っ黒な髪をしっとり濡らし、首からタオルを掛けていた。
「ただいま。今日は出張でそのまま直帰だったから。」
「そう。おかえり。今日カレーなんだけどどうする?」
慣れた手つきでケイが猫を抱き上げた。
「いただこうかしら。」
「じゃあ用意しておくから先にお風呂入っちゃえば?」
無表情で素っ気なく言い放ち、猫を抱いたままキッチンへ向かって行った。
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