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重い足を引きずって講義室を出る。
足に鉛がついているようだ。誰かに殴られたみたいに、頭がボーっとして機能してくれない。「明日から休みだ」、とか「これからゲーセン行こうぜ」、だとか浮かれた奴らの声に吐き気がする。
帰りたくないと、頭では思うのに。
自分の意思に反して足は一歩ずつ一歩ずつ着実にアパートへ向かっている。
3階に居たはずなのに気が付いたら外に出ていて、黒髪の綺麗な顔立ちをした青年と目があった。
途端に、膝ががくがくと震え出す。
それでも、一歩、また一歩と足を踏み出し、引き寄せられるようにそいつの元へと歩んでいく。
そいつは、毎週金曜日になると制服姿のまま校門で俺を待ち受けている。
逃げ出すなんて選択肢、俺にはない。
あったとしても選べない。
選ばない。
「会いたかった。一週間が待ち遠しかったよ。」
会いたくなかった。
金曜日なんて永遠に来なければいいと思っていた。
「………俺も、だ、よ。」
声が震えた。
全身を真っ黒な瞳で舐めるように見つめられ、身体が竦む。
「嬉しい。兄貴。」
真っ黒な瞳が弧を描く。目尻が下がって、口元には不気味な笑みが浮かべられる。
吐き気がする。
血が繋がっていない事実だけが唯一の救いだ。
この男は戸籍上俺の弟だ。
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