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4ページ目 4 弟side
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兄貴が俺の手首を掴み、まるで逃げ帰るかのようにずんずんと早足でアパートへ向かう。
だけどそれも最初だけで次第に歩く速度は遅くなり、息を乱しながらおぼつかない足取りで壁を伝い歩く様は見ていて危なっかしい。
足を縺れさせて何もないところで前のめりに倒れそうになった。
咄嗟に兄貴の腕を掴むと、転ぶことはしなかったがそのまま座り込んでしまった。
「大丈夫?」
「だいじょぶ……だから…。」
荒く息をさせて、額には汗を滲ませて「大丈夫」なんて言われても何の説得力もない。
ガクガク震える膝に鞭打って壁を支えに立ちあがろうとしているが無駄な努力だ。
見兼ねてブレザーを脱ぎ、兄貴に押しつけてから横抱きにする。
軽い。
前に抱いた時よりも明らかに軽くなっている。
「いっ、嫌だッ!離せッ…!!」
赤かった顔を青くさせ、俺の腕の中で小さく抵抗をした。
「あんたが悪いんだからな。」
そう言うとぴたりと兄貴の動きが止まる。
「なっ、なんで…。」
「さっき俺から目ぇ逸らしたろ?」
今にも雫が溢れそうな瞳を見開く。
「そんなことなっ」
「逸らしただろ。」
校門で目が合った瞬間、兄貴は目を逸らした。
元々遅かった歩くペースをさらに落とし、目線を下げたまま俺の元へ歩み寄ってきた。
それから一度だって俺の目を見ようとはしなかった。
「ごめっ…!!ごめんなさいっ、ごめんなさい!!」
言い逃れできないと悟ったのか、唇まで真っ青にしてガタガタ震えだした。
「うるさい。敬語、俺嫌だって言ったよな?」
「っ!!ごめんなさい…。」
小さく呟き、無理矢理持たせたブレザーをぎゅっと握って顔を隠した。
だから敬語嫌だって言ってるのに。
「家に帰ったらたっぷり可愛がってやるよ、兄ちゃん。」
分かりやすいくらい、ビクンと身体が震えた。
「ぅく……ぅっ…。」
くしゃくしゃになったブレザーの下から小さな嗚咽が聞こえた。
帰ったらアイロンかけないとな、なんて考えながら軽い兄貴の身体を抱えてアパートへ向かった。
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