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4ページ目 17 弟side
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「ユウあんたまた来たの…。」
「だって啓太が寂しがるから。」
「別に寂しくなんかない。」
大学に進学して最初の1ヶ月くらいは兄貴は毎週毎週家に帰ってきていて、優子さんは呆れていた。
俺だって兄貴がいなくなった分家事の負担が減るし、何より鬱陶しいのがいなくなって清々していたはずだった。
「こんなところでぐぅたらしてないでバイトでもしなさいよ。そんなんだと仕送り止めるわよ。」
「んー…履歴書は書いたんだけどさぁ。」
「早く電話しなさい。時期に募集なくなるわよ。」
バイトを始めてから、兄貴はぱったり家に帰ってこなくなった。
その代わり携帯によく電話が掛かってくるようになった。
用件は「悪いんだけど、今度こっちに来れない?」。
兄貴の住むアパートまでは電車で2時間、その他移動を含めると3時間かかる。
面倒臭い。そして行ったら行ったで部屋がぐちゃぐちゃで家事をさせられた。
こいつは一体俺をなんだと思ってるんだ。便利屋か何かだと思っているのだろうか。腹が立つ。
そしてしばらくすると、一切連絡がこなくなった。
だから、俺から連絡するようになった。兄貴を放っておいたらあの部屋はゴミ屋敷に変貌するから。
バイトを通じて大学で友人ができたと言っていた。課題の量が鬼のようだと言っていた。バイトが忙しいと言っていた。
「なかなか充実してるんだね。よかったじゃん。」って言ったら「お前は俺の親かよ」って言われた。
兄貴の顔は晴々していて、上手くやれてるんだなって思った。
何かが、胸につっかえた。
たまに、だけれど「友人と出掛ける」、だとか「シフトの変更があって出勤しなければならない」だとか「課題が多いからやらないといけない」といった理由でアパートに行くことを断られるようになった。
「ごめんな」、って兄貴は謝ってくれたけれどどうも腑に落ちなかった。
兄貴にも付き合いがあるのだから仕方ないと分かっているのに。そもそも、長い時間をかけて家事をしに行くなんてアホらしいのに。
兄貴に彼女ができたことを知った。
兄貴はそんなんじゃないって否定したけれど、男女で映画を見に行くことがデートじゃなくて何て言うのだろうか。
彼女くらい、出来ていても当り前なのだ。むしろ遅すぎるくらい。
頭では理解できているはずなのに、はらわたが煮えくりかえるような怒りを感じた。
これを嫉妬だと理解するのは、もう少し後になる。
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