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少し前までは心配してくれた友人がいた。
事情は話さなかったけれど、それでも出来る限りは匿ってやるって言ってくれた。
正門は弟が立っているから裏から出て友人にお世話になった。
スマホがずっと鳴り響くことは容易に想像がつくから、あらかじめ電源を切っておいた。
場所が特定されるんじゃないかって不安だったけれど、そんな心配はなく久しぶりに心休まる休日を過ごせたのだった。
「何だったら一緒に住めばいい」とまで言ってくれたが、さすがにそれは申し訳ないから気持ちだけ受け取った。
弟にも学校があるし、おふくろと同居しているからそんなには自由に俺のアパートを行き来できないはず。
だから週末だけお世話になることにした。
そんなことは二度となかったのだけれど。
月曜日の朝、必要な荷物を取りにアパートへ戻った。
この二日間、アパートにいたとしてもさすがにもう帰っているだろうと思った。
甘かった。
前日のうちにおふくろに身体の不調を訴えて学校を休ませてもらっていたらしい。
仮病なんて使うような奴じゃないから、おふくろも簡単に信じたようだ。
階段を上っていき、踊り場に着いた途端、鬼の形相で携帯を片手にこちらを睨みつける弟と目が合った。
蛇に睨まれた蛙の心境だった。
激しい動悸と吐き気に見舞われてその場に佇んだ。
乱暴に手を引かれ中に入った途端玄関で押し倒され、強引に身体を繋げられた。
翌日弟は学校へ行ったが俺は腹を下して動けなかった。
しばらくの間貞操器具が取り付けられ、週末にならないと外してもらえなかった。
その日からだ。
目が覚めると必ず首から短い鎖が伸びていてベッドの足のところに繋がれている。
寝がえりを打って、ベッドの上でかろうじて座れるくらいの長さしかない。それだけでも充分動けないのに手首や足首も頑丈に縛めがなされていた。
食事から排泄まで、全て弟の手で管理された。
ふわっとした匂いが鼻を掠める。
何の匂いかな。醤油かな…。
目を開けると、ベッドのすぐ近くに置いてあるちゃぶ台の上に肉じゃがの乗った皿が置かれていて、頭上の方で物音がする。
ここ数日、食べては吐くことを繰り返したからお腹は空いているはずなのに吐き気しかこみ上げて来ない。
洗い物でもしているのだろうか。弟は俺が目覚めたことには気が付いていないようだった。
手が自由なことに気付いた。
痛む身体に鞭打って首に触れてみるが、いつも付けられている赤い首輪はなかった。
綺麗な服が着せられていて、シーツも取り換えられているようだった。
どういう気まぐれかは知らないけれど逃げるなら今しかない。
「ああ、兄貴。起きたの。」
逃げられるはず、ないのに。
拘束はなされていないが身体を動かすのは億劫だ。
今日も酷くされたからきっと足腰立たないに決まっている。
「今日の晩飯肉じゃがなんだけど食える?」
「………食う。」
「ん。じゃあ口開けて。」
いくらか上機嫌になった弟がジャガイモを小さく箸で切って口に運んできた。
本当は食べたくなんかなかったけれど、「要らない」と言ったら殴られた前科がある。「具合が悪いから」と言ったら「それならよくなるまでつきっきりでで面倒見る」なんて言われて、断ったら殴られた。
弟とお揃いで買った箸、茶碗、お椀。
弟が選んだ服。弟が買ってきたシーツ。弟と買いに行ったベッド、ちゃぶ台、本棚、電球、パソコン、スマホ、カーペット。
俺の部屋のはずなのに全てが弟に関わって、染まっている。
この空間にさえも吐き気がした。
口を開けると少しだけ冷めたジャガイモが口の中に入ってくる。
俺が猫舌と知っている弟が冷ましてくれたのか、偶然なのか。
飲み込もうとしたのに飲み込めなくて、胃がムカムカして昼間無理矢理収めた物が逆流してきた。
咄嗟に起き上がって口を押さえたけれど指の隙間からぼたぼた零れてきて取り換えられたばかりの服やシーツを汚していく。
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