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顔を上げて、言葉を失った。
弟の手に握られていたのは、包丁。
「ただ持っててくれればいいから。後は俺がやる。」
そう言って、切っ先を弟に向くように握らされた。
手が震えて、落としそうになったところで弟の手が添えられる。
「け…啓太…。」
俺の肩に顎を乗せ、腰に腕を回した。
包丁を握らされている手に、ズン、と重みがかかった。
ずるいよ。
そんな言葉を聞きたかったんじゃないよ。
「ああ、このままだとあんた殺人犯で捕まるかもしれないな。ビデオ回しておこうか。あんたが無実だっていう証拠残さないと死にきれない。」
そう言って、弟の身体が離れて俺に背を向けた。
口いっぱいに生温かい液体が広がってドロドロと零れてきた。
まるで映画みたい。
痛いだろうな、なんて踏み出せなかったけれど実際はそうでもなかった。
指を切って、しばらく経ってから痛みに気付くことがある。
今も多分、そういう状態なのかもしれない。
身体を締めつけられて、痛い。
弟が耳元で何か叫んでる。
世界一嫌いで、世界一可愛い弟に、抱きしめられている。
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