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「じゃあ、またね。」
「はい。」
軽く立ち話をしておばさんはレジへ向かって行った。
目に見えてぶすっとしているのによく弟が不機嫌だと気付かないな、と思う。普段が無表情だから分かりにくいのかな。
そんな失礼なことを考えていたら、「よく会うおばさん。覚えていないかもしれないけど昔から気に掛けてくれてる人」、と耳打ちされた。
そう言えばそんな人いたな。
昔よくおふくろに頼まれて弟とおつかいに来ていたのだが何かと世話を焼いてもらった覚えがある。
弟が買い物かごを腕に掛けて腕を組み、明後日の方向を睨みつけながら爪先でトントン床を蹴りだした。
弟の気は長い方じゃない。
「建太くん、決まった?」
「んーまだ~。」
「何で悩んでるの。」
怒気を含んだ声。
「これとこれ。」
建太くんがカップのアイスと棒アイスを指差した。
なんでこんなに不機嫌なのに気付かないのだろう。見ているこっちがヒヤヒヤする。
「じゃあこっちにすれば?食いながら帰るんだろ?早くかごに入れろ。」
棒アイスを指差しながら弟が言う。
「うん、そうするー!」
「兄貴は?」
「じゃあこれで。」
アイス二つ追加されたかごを持って弟がレジに進んで行った。
帰り道、建太くんはさっそくアイスを嬉しそうに頬張っていた。
俺も袋を開け、二つ付いているものを半分に切り離した。
「啓太、いらないかもしれないけど。」
そのうちの片割れを来る時と同様俺たちの後ろを歩く弟に手渡した。
「…ありがと。」
弟が受け取ってくれたことに一先ず安堵する。
「昔二人でおつかい来た時お釣りでこれ買って二人で半分こして食いながら帰ったよな。覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ。」
よかった、いくらか機嫌は直ったみたい。すぐ不機嫌になる代わりに割と単純に機嫌が直るから御しやすいといえば御しやすい。
弟が家の鍵を開けて中に入り、その後に続く。
「ただいま。」
「おかえり、兄貴。」
何気なく言った一言にさっきまで一緒に出掛けていた弟が答えた。
その顔はなぜか嬉しそうだった。
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