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弟がチョコレートが付いた指をぺロっと舐めながら手持ち花火に火を付けていた。
「…何してんの?」
俺に背を向けるようにしゃがみこんで、シュコーと音を立てて火を吹いている花火を玄関の段差の隅に当てていた。
「雑草燃やしてる。」
「やめろよ…。可哀想に。」
普段澄ましているくせにたまに子供っぽいことをする。
「兄貴花火しないの?」
「んー…じゃあちょっとだけ。」
建太くんは少し離れたところでお母さんに見守られながら花火をしていたから俺が見ていなくても大丈夫だな、と思いそう返事すると早速弟が一本花火を持ってきて、自分の持つ花火にそれを近づけ、火を引火させて俺に寄越した。
「懐かしいな。お前が小さい頃毎年花火してたの、覚えてる?」
「うん。」
「初めてお前と花火した時さー、最初俺の服掴んで見ていたくせに火を付けた瞬間後退りしてバケツに足引っ掛けて尻餅ついて泣いてたよな。」
「……そうだっけ?」
建太くんくらいの年だった。
臆病で、何に対してもビクビク震えていたくせに好奇心は旺盛で、だんだん近づいてきて俺の後ろにへばりつき色とりどりに変化する花火をじっと見つめていた。
「火頂戴。」
「ん。」
弟の持っていた花火の火薬が燃え尽きて、それを水の入ったバケツに投げると見事命中してジュ、という小気味よい音がした。
新しい花火を弟が持ってきて俺の花火に近づける。
「なにそれ。」
「なんかあったから。」
持ち手がペラペラの厚紙で、ストローのようなものが先端についていてそこからバチバチ大きめの音を立てて黄色い火花が散っていた。
「お前と初めてやったの、線香花火だっけ。」
「よく覚えてるね。」
おふくろは弟に花火を持たせてやりたかったみたいだけど、ぶんぶん首を振りながら怖がって一向に手を出そうとしなかった。
そんな弟に半ば無理矢理持たせたのが線香花火だった。
火を付けて、燃えた部分がだんだん上に行って丸い玉を作ってゆく様子に釘付けになっていた。
ぱち、と火花が散った瞬間ビクーっと肩を跳ねさせ、持っていた花火を落としてしまって、やはり泣いてしまっていた。
俺と弟の持っていた花火がほぼ同時に消えた。
「兄貴、勝負しよ。」
「は、何?」
「線香花火。兄貴が先に落としたらキスさせてよ。」
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