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一瞬重なっただけで弟の唇は離れた。
夏の夜、空気が濁っているため満天の星空、とは言えないが雲一つない空には月がまばゆい光を放っていた。
すぐ近くでは建太くんと、そのお母さんが花火をしている。
その環境のせいなのか、それとも見られるかもしれないスリルからなのか。
リビングから漏れる薄明かりに照らされた弟の大人びた顔が今だけは幼く見えた。
「兄貴。」
はぁ、と艶めかしい吐息をもらし切羽詰まったような声で俺を呼ぶ弟。
余裕のない顔でふっと幸せそうに微笑む弟に、今度は俺から顔を寄せていった。
目を丸くした後戸惑いがちに伏せ、頬を赤らめる姿に不覚にも心臓が高鳴る。
伏せられた瞳が俺を捕え、だんだん閉じられていって、まるで引き寄せられているかのように上体がゆっくり俺に近づいてきた。
月明かりに照らされている弟の綺麗な顔を見つめながら俺の瞼も少しずつ下がってゆく。
弟の浅い吐息が唇にかかるまでに近づいた時。
ゴンッ
鈍い音と共に、頭に激痛。
「ゆーうーとー?何あたしの啓太誑かしているのかしらー?」
首だけ動かして後ろを振り返るとスイカの乗ったお盆を持つおふくろに見降ろされていた。
上から降ってくる声はいつもより低い。話し方はいつも以上にゆっくりで、一文字一文字に怒気が含まれているのを感じる。
ふと、おふくろの後ろの方から視線を感じてそちらに目をやると建太くんのお母さんが口に手をあててニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「ケイ、これ建太くんと食べな。」
「あれ?俺の分は?」
おふくろが弟に手渡したお盆の上にはスイカは二切れしか乗っていなかった。
「あんたはこっちよ。この馬鹿息子。」
「いでででででで!!ごめんなさい、ごめんなさい!!」
耳を引っ張られ、そのまま玄関の方へ引き摺られた。
その後に「啓太くん、建太よろしくね」って言いながら建太くんのお母さんが続いた。
外に残された弟と建太くんは何が起こったか分からない、と言ったようなぽかんとした顔をしていた。
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