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「ッ!」
キャベツを刻む小気味よいリズムが途絶え、突然弟が小さく声を上げた。
「どうした?」
「切った。」
弟の近くに歩み寄ると包丁で切れて血が出ている人差し指を見せられた。
一直線の鋭利な傷口に、プク、プクと赤い血溜りが出来ていて今にも溢れそうだった。
弟は患部を水で洗い流そうと、痛そうに顔を顰めるわけでもなく何事もなかったかのように平然とした表情で水道の蛇口を捻った。
「ッ、兄貴何やってるの!?」
自分でも分からない。
気付いたら蛇口から流しに一直線に落ちる透明な水に近づいていた手を取り、弟の指を口に含んでいた。
「……ごめん!」
弟の視線に気付き慌てて口を離した。当然だが驚かせてしまったようで弟の目は見開かれていた。
「どうしたの?」
「…どうもしないよ?ごめんね。」
昨晩、あんなものを見てしまったからかもしれない。
蛇口からは透明な液体が流れ続けていた。
「兄貴、チャンネル変えていい?」
「いいけど。何見るの?」
「映画。ちょっと気になってたやつが今からやるんだよね。」
「ふぅん?」
弟は根っからのテレビっ子だ。朝のニュース番組からクイズ番組、旅行番組やグルメ番組、ドラマや映画など見ているジャンルは幅広い。
昨晩、弟はシャワーを浴びて来て早々テレビの前に陣取り髪をタオルで拭きながらチャンネルを変えていた。
一方、俺は常にテレビを付けているけれど内容をちゃんと見ていることはあまりない。一人暮らしで音がないと寂しいからBGM代わりに付けているだけ。
ベッドに寝そべって本を開いていたらテレビからギィィィ…という重々しい音と、「ぎゃあぁぁぁ!!」という女性の断末魔の叫びのような声が聞こえてきた。
「…それ何?」
内容がちっとも頭に入ってこなくて、本を閉じてテレビに目をやった。夜のシーンなのか、画面が真っ黒で時折稲妻が光っていた。
「ヴァンパイア系のやつ。ごめん、うるさかった?」
「いや、別に大丈夫だよ。」
ボリュームを下げようとリモコンに手を伸ばしている弟を止める。
その後読書を再開しようと思ったのだが、やはりテレビが気になって一緒になって映画を見た。
この映画はヴァンパイアに攫われた彼女を救う青年が主人公で、最終的には青年もヴァンパイアにされてしまって彼女を喰い殺してしまう話だった。
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