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深く切れているのかもしれない。弟の人差し指からは絶えず鮮血が流れ出ていた。早く傷口を洗わないと、と思いつつも、傷口から目を離せなかった。
「血、欲しいの?」
「え…。」
顔を上げて、驚愕する。
目の前に出されたのは、真っ赤な真っ赤な弟の手首。
弟の右手には包丁が握られていた。
「何やってるのお前っ!」
「ほら、早くしないと零れるから。」
包丁を置いた右手が俺の後頭部を捕らえ、鮮血で染まる自身の左手首に誘った。
鼻をかすめる独特の匂い。
いけないと思いながらも弟の手首に舌を這わせた。
甘い。
それからはもう、夢中だった。
今まで普通の人間として生きてきた。俺は吸血鬼なんかじゃないのに。血を見て美味しそうだと思った事など一度もないのに。
血を舐めることへの背徳感や嫌悪感を不思議と感じない。貪るように血を求めた。
まるでワインでも飲んでいるみたい。だんだん身体が熱くなっていって、頭がボーっとしていった。ふわふわして、夢見心地で気持ちがいい。
噎せ返るような血の独特な臭みも俺を高める材料でしかなかった。
決して何かに飢えていたわけではないのに何かが満たされていくようだった。
「美味しい?」
弟の声が聞こえた気がしたが、この甘美な血潮から口を離すのが惜しい。床に零れたらもったいない。
急に弟の腕が口から離された。止まることを知らない赤い液体は弟の皮膚を汚しながら袖の中へ消えていった。
恨めしい気持ちで睨みつけると、弟は可笑しそうに目を細めてくすくす笑いながら自身の手首に舌を這わせた。
弟の口元が赤に染まる。
「こっちだよ、兄貴。」
舌舐めずりしながら紅よりも赤いもので濡れた唇で俺を誘う。
誘われるがままに弟の顔に口を近づけた。まるで犬みたいに唇を舐め、赤く汚れた口元を舐める。
弟が舌を出した。先ほど自分で舐めた血であろう。綺麗な綺麗な赤い色をしていた。弟の舌の表面を自身の舌で舐め上げた。
「んっ。」
鼻に抜けたような声が弟から漏れた。それだけで俺を興奮させるには充分だった。
今度は離れられないように弟の首に腕をまわした。
血を求めて口腔を掻き回す。
顔を離すと弟が再び自身の傷口に口付ける。お預けをくらっている気分になってぼんやりと弟の妖艶なその仕草を眺めた。
こいつはこれを美味しいとは思わないのだろうか。
血を口に含んでいる弟の眉が顰められていて不快感を露わにしていた。それでも、綺麗な弟の顔が血で汚れる様は絵になる。
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