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「けーた?」
ようやく弟の首筋から頭を上げ、目を合わせて、凍りついたように動けなくなる。
弟の真っ黒な瞳に光がなかった。
「けーた、啓太!!」
赤く濡れた両手で弟の頬を包み込む。
荒かった呼吸が随分浅いものに変わっていた。
「何…。どうしたの。」
そう言う声に生気が感じられない。
指先だけじゃない。顔も、身体も冷たくなっていた。
「しけつ…!止血しなきゃ!!」
大量に血を流せば人間は死ぬ。
そんな当たり前のことを何故忘れていたんだろう。
俺はどのくらいこいつの血を飲んだ?
「いいよ。ほら、飲んでよ。」
俺の顔を撫でていた手が首へ滑り後頭部を力なく押した。
弟の左耳に付いているピアスと、同じ赤。溢れ出る鮮血に吐き気が込み上げてきた。
冷え切った頭では血が甘美なものと思えない。
自分の口元を拭ってゾッとした。
白い袖口が弟の血で真っ赤になった。
噎せ返るような血の匂いに、頭痛がしてきた。
首にまわされた弟の手が力なくベッドの上に落ちた。
顔色がどんどん悪くなっていっている。
首だけでなく手首からも、指からも血が流れ出ていて白いシーツに赤い染みを作っていた。
「いやだ…。行かないで…。」
タオルを取りに行こうと弟の上から退いた俺の服の裾を冷え切った弟の手が引いた。だけどそんなことに構っていられない。止血するのが先だ。
弟に背を向け、タオルを取って戻ってきた時、真っ黒な弟の瞳が白く濁っていた。
「けーた?」
せっかく持ってきたタオルは手から落ち、それが床に落ちるよりも早く弟の元へ駆け寄った。
「啓太!!啓太ッ!!」
強く揺さぶっても、ただ俺の揺すりに合わせて動くだけ。
傷口からは絶えず血が流れ出ていた。
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