アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12ページ目 1
-
シャワーを浴びて部屋に戻ると、ちょうど見計らったかのようにスマホが軽快な音を鳴らしてメールの受信を教えてくれた。
相手はやはり弟で、相変わらず本文はなくただ飼い猫の写メが一枚添付されているだけの質素な内容だった。実家で猫を飼い始めてから、たまに動物の画像や動画サイトを見漁っている俺の為に…かは分からないが毎日のように黒猫の写メが送られてくる。
画面を消して鞄を手繰り寄せノートパソコンを出そうとした時、再びスマホが音楽を奏でた。弟からの電話だった。
応答して耳に押し当てる。
「啓太、またこっち来るの?」
「メール見た?」
「…うん。」
「今日こたつ出したんだ。」
会話が全く成立していないが、とりあえず返事をした。いつもこの時間の電話ならば今週はいつこっちに来るかという話をしてから世間話をしてすぐに電話を切っていた。
今日送られてきた写メはこたつ布団の上で猫が丸まっている写真だった。
「みかんひと箱買ったんだけど俺と優子さんじゃ食いきれなくてさ。」
「……うん。」
「明日すき焼きでもやろうと思って。」
「ふぅん?いいんじゃない?」
会話の不成立はさておき、話の内容が突拍子もない上に脈絡がない。
「明日優子さんが帰って来ないんだ。」
「…もしかして、実家戻って来いってこと?」
おふくろと弟だけならみかんはスーパーで売っている小袋で充分なはず。おふくろがいないのにわざわざ土鍋を出す手間を掛けて一人で鍋を囲むなど不自然だ。
「………ん。」
画面の向こうで弟が小さく肯定した。
「素直にそう言えばいいのに。」
最近頻繁に帰宅している気がする。正直面倒臭いがいつも来てもらっている身だから嫌とは言えない。
「わかったよ。明日そっち行く。」
講義が終わり、その足で駅に向かうと帰宅する学生や仕事を終えたサラリーマンでホームがごった返していた。俺の住む街は特筆するものはないが駅周辺に商業施設が立ち並び、大学も多い。周りには住宅街が広がっておりこの駅を利用する客は多いのだ。
到着した電車にも人が大勢乗っており、半数くらいの人が降りたがその倍ぐらいの人間が乗り込んだ。外は寒いのに車内は暖房と人口密度で蒸しっとしていて息苦しい。
いつもこうなのだと思うと、毎週こっちに来て特に何するわけでもなく黙々と家事をしてくれる弟には頭が上がらない。到着の予定時刻のみをメールで伝え、長い道のりをただ電車に揺られて過ごした。
「おかえり、兄貴。」
電車を降りて改札をくぐるといつも俺がそうしているように駅で出迎えられた。弟は制服姿で、その隣には弟と同じ学校の制服を纏った女の子がいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
146 / 228