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弟がスカートの入っていた袋から紙を取り出し、何かを書き付けてからスカートと一緒に袋の中へ戻した。
それを持って再び弟が部屋を出ていく。出たり、入ったり忙しない。弟の背中を見送ってからその場に横になりこたつ布団を胸まで手繰る。
時計を見れば短い針は10を過ぎていた。程良い満腹感に、包み込まれているかのようなぬくもり。弟が階段を上ってゆく足音が心地よいリズムを刻んでまるで子守唄でも聞いているかのよう。だんだんとテレビの音が遠ざかって行っているような不思議な感覚。
少しだけ、と自分に言い聞かせて本能に従って目を閉じた。こたつでまどろんでいる時が一番幸せだ。
「兄貴。」
二階に上がって行ったはずの弟の声を近くで聞いた。いつの間に戻ってきたのだろう。声のした方に顔を向けると弟の整った顔が俺の平凡な顔を覗き込んでいた。
「ここで寝るなよ。風邪引く。」
「んー。」
目を閉じて弟に背を向けた。
「兄貴ってば。」
煩い。肩を揺すられて反抗するように布団を頭まで深くかぶった。
「…仕方ないな。頭上げて。」
こたつ布団の外からため息が聞こえた。ようやく諦めてクッションでも差し込んでくれるのかと言われた通りに頭を持ち上げると固くてひやっとしたものがカーペットと頭の間に割り込んだ。
「…何?」
こたつ布団を目の下の位置までずらし、弟を見上げる。明りを遮られて影になっている。弟に膝枕されていた。
「こたつ入ればいいじゃん。」
「あんたがずっぷり入ってるから俺の入れる場所がないんだよ。」
俺が小さい頃からあったこたつだ。大きいサイズではないし、俺が占領しているから足を伸ばせる程の余裕はない。だけど入るなら場所を開けてやるし、正座や胡坐でなら入れるスペースは充分にあった。
「兄貴、顔赤い。」
布団を捲られ弟の冷たい手が頬に触れた。まるで俺の顔で暖を取るかのようにべたべた触られて鬱陶しい。放っておいてほしいと思うのに振り払わなかったのは火照った頬に冷たい弟の手が気持ちいいと感じているからだ。
「熱いでしょ。こたつ、弱めようか。」
「…お前、今日はよく喋るなぁ。」
こたつのスイッチを弄る弟を見上げながら言う。今日の弟はやたら機嫌がいい。口数が多いし、いつも以上に俺に干渉してくる。
「そうかな。…あ、耳かきしてやろうか。」
「………。」
「気持ちいい?」
「んー。」
高さが合わなくて首が痛いが弟の好きにさせてやった。相変わらず弟の手は冷たいし、面棒が耳の中を擦るたびにこそばゆい。
弟の冷たくて固い膝に頭を委ね、目を閉じた。
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