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眉を吊り上げ、鋭い目つきで睨みつけられた。
「ごめん。」
髪を掴む力を緩めた。
「い゛ッッッ…!!」
痛かったろ、と言おうとした時左手に激痛が走り、顔を歪めた。
弟が、俺の手の甲に歯を立て腕に爪を食いこませていた。
その力は緩むことはなく、むしろ強くなっていってるように思う。右手首を抑える手にも力が籠り、弟が馬乗りになっているから思うように身体が動かせずただ耐えることしかできなかった。
怒りに歪む弟の瞳は哀しげで、泣いているようにも見えたから怖いとは思えなかった。
「けーた。」
叫びたくなるのをぐっと堪え、弟の名を呼ぶと黒い瞳と一瞬だけ目が合った。
「ちょっと話しよ。…な?」
そう言うと弟は俺の手から口を離し、右手を解放してくれた。弟の下から這い出て自由になった右手で弟の身体を抱き寄せた。右手首はぐるっと一周赤い手形がくっきりと付いていた。
「…ごめん。」
弟がポツリと呟くように言い、労わるように噛み痕の付いた左手を包み込んだ。
「いいよ。俺の方こそ、髪引っ張ってごめんな。」
痛覚が麻痺しているのか痛みはなかったが、皮膚が破けて血が滲んでいた。服の上からは見えないが爪を立てられたところは赤くなっているに違いない。右手で弟のサラサラの髪を撫でてから掛け布団を手繰り、共に身体を横たえて布団を掛けた。
「お前さ、俺のどこが好きなの?」
枕に頭を乗せてこちらを向く弟の黒髪を梳く。弟に包み込まれている左手の噛み痕はだんだん痛みが戻ってきたようでジンジン熱を持っていった。
「は?なにそれ。」
端正な作りをしている顔が歪んだ。自分でも変なことを言っている自覚はあるのだが、あからさまに顔に出されると結構ショックで。
「言えばくれるの?例えば目って言ったら眼球えぐり出して俺にくれる?」
「いやいや、無理だよ。何言ってるの。」
「大丈夫だよ。身の回りのことは全部俺がしてあげる。目玉は…そうだな。ホルマリン漬けにでもして部屋に置いておこうかな。」
すぐに冗談だよ、と言われたがこいつが言うと冗談には聞こえない。やっぱりなんでもない、と発言を取り消そうとしたらそれより先に弟が口を開いた。
「全部。顔も嫌いじゃないし、声も好き。部屋は汚いし、だらしないけどそういうところ全部ひっくるめて好き。」
「どこか一カ所、って言ったら?」
そんなこと言われて悪い気はしない。少し調子に乗り過ぎたようだ。再び弟が不快感を顔に出した。
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