アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12ページ目 30
-
足が勝手に動き、風呂を沸かして冷蔵庫からペットボトルを取って自分の部屋の前まで戻ってくるのは早かった。だが、そこで足が止まった。
自分の部屋なのにドアを開けるのが躊躇われた。なんとなくノックしてから静かにドアを開けた。弟は俺が布団をかぶせたままの格好で微動だにしていなかった。
音を立てないようにドアを閉め、小学生のころから使っていた学習机の椅子を引いた。
あまりにも静かだったから寝ているのかと思った。
「こっち来て。」
相変わらずピクリとも動かずにただ声だけが聞こえる。機械が喋っているみたい。椅子を戻して声のする方へ歩み寄り、枕元に腰掛けるとベッドが少し沈んだ。
動く気配はなく、かといって話をする素振りもなくただ沈黙だけが流れた。
「水、飲む?」
「いい。要らない。」
沈黙に耐えかね口を開くがすぐに会話は打ち切られた。ペットボトルの蓋を開け、中身を自らの喉に流し込んだ。蓋を開ける時のパキパキパキ、という音がやたら耳についた。
「…兄貴、なんで怒ってる?」
冷たい水で喉を潤し、キャップを閉めている時ようやく弟が口を開いた。モゾモゾと掛け布団が動き、俺に背を向けていた弟がこちらを向いた。俺を見上げる二つの眼は不安げに揺れていた。
――怒ってる?俺が?
言葉では言い表せぬこのモヤモヤ感。
ああ、この感情は「怒り」だったのか。
「「俺」じゃ駄目だった?気持ちよくなかった?」
「お前は本当に馬鹿だね。」
そう言うと眉間に皺を寄せて押し黙った。
「自分を駄目なんて二度と言うな。分かった?」
「………ごめんなさい。」
「ん。分かればよし。」
表情を暗くする弟の髪に手を伸ばすと、弟は頭まで布団をかぶった。
「ちゃんと気持ちよかったよ。俺のために痛いの我慢してくれたんだろ?ありがとな。」
布団の上から弟の頭を撫でた。
「…夢の中の俺と、どっちがよかった?」
全く、こいつは。
俺が怒っていることは分かったくせに、肝心の理由が分かっていない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
175 / 228