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「ほら、馬鹿なこと言ってないで風呂入るよ。」
弟を促し、ボタンを止め直してから身体を起こした。「平気」だなんて何でもない事のように言っていた弟は身体を起こすのも辛そうだった。
カーディガンを取ってきて、布団の中からすっかり皺だらけでくしゃくしゃになってしまったワイシャツに袖を通している弟の肩に掛けた。下に穿くものは何かあったかな。短いスカート一枚では何の防寒にもならない。クローゼットに足を向けたら袖を引かれた。
「下はいいよ。どうせすぐ脱ぐんだし。」
たったそれだけのことが面倒臭いらしい。布団から足を投げ出しながら弟が言う。
「あ、肩貸そうか。」
立ち上がるのかと思い、そう申し出ると俺に向かって両手を広げて一言。
「おんぶ。」
弟がいつもに増して無表情で言うのだから、脳の処理が遅れた。それに伴い行動に移すまでに空白の時間ができた。
「あ、シーツ剥がして。洗う。」
言われた通りシーツを剥がし、俺の背中に乗るでっかい弟に渡す。弟の冷たい足の裏に手を差し入れ、背負い直してから部屋を後にした。背中と、弟の身体の間にある布の塊に違和感を感じる。
「風呂から出たら兄貴が淹れたコーヒー飲みたい。」
今日は一体どうしたのだろう。こんな我が儘を言う奴じゃないのに。
まぁ、悪い気はしないけど。
俺の実家は玄関を入ると真っ直ぐ短い廊下になっていて、付きあたりを右に階段、左に風呂場、トイレという作りになっている。階段を降りた時、ちょうど見計らったかのようにガチャっと音がして玄関の戸が開いた。
「優子さんおかえり。」
俺とおふくろが硬直する中、弟だけが何事もなかったかのように口を開いた。
俺はおふくろから目を逸らし、何事もなかったかのように風呂場へ足を進めた。おふくろも、何も見なかったことにしたらしい。奇異な物を見る目で見られたがそれ以上何も言わなかった。
風呂上がり、要望通り弟にコーヒーを淹れてやったらぬるい、と文句を言われた。
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