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翌週、弟の文化祭の日。
文化祭は9時から15時までで、クラスの出し物は全員参加型。ほとんどのクラスは前半後半の二つに分かれて運営するのだが弟のクラスも例外ではない。午前に売り子をして午後はフリーだから12時に校門に集合する約束をした。
朝目覚めたのは10時半、急いで支度をしてアパートを飛び出したのが11時近く。電車に2時間揺られて、駅から弟の通う学校まで徒歩1時間以上。駅からバスが出ているのだが、土曜日なので平日に比べて本数は少ない。バスを待ち、集合場所に着いたのは14時近くなってしまっていた。
弟の高校は俺の母校でもあるが懐かしいなどと浸っている暇はない。アーチが作られ、すっかりお祭りムードになった校舎へ入る人、帰宅する人。誘導する生徒、教師。弟の姿を探すが人が多すぎる。電話した方が早い。ポケットからスマホを取り出した時、急に腕を引かれた。
「遅い。」
「は!?」
俺の腕を引いたのは黒髪の綺麗なロングヘアで背の高いメイド服を着た女の子。右手には食べかけのフランクフルトが握られている。まつ毛が長く、ぱっちりした目の瞳は真っ黒で引き結ばれた唇はつやつやしている。右にシルバー、左にレッドのピアス。
「………啓太?」
正体が分かるまでに少し時を要した。俺と対になっているピアス、低い声、俺の腕を掴むゴツイ手、その腕に巻かれたお揃いの腕時計、俺とほぼ同じくらいの背丈。いくら美人でも体格は立派な男だった。
「どうしたの、その格好!?お前女装しないって言ってたじゃん!」
「委員長が休んだんだよ。」
弟が腹立たしげに言う。
「委員長」が着るはずだったのだろうか。先週、弟はワイシャツに黒のスカートを穿き、リボンとエプロンを付けるのだと言っていた。だが、弟は黒のワンピースに身を包みフリルがふんだんに使われた白のエプロンという出で立ちだった。膝上の長い靴下に合わせられた物が学校指定の革靴と言うのは何ともアンバランスだ。
「…写真、撮っていい?」
「好きにすれば?」
弟の返事を聞く前には握り締めていたスマホをカメラモードに切り替え、不機嫌な弟の姿を写していた。
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