アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12ページ目 38
-
「したくもない格好させられて、周りの視線がすっげぇウザくて気持ち悪かった。」
俺がメイクを落としてやる間、弟は静かに思いのたけを話してくれた。
「うん。でもほら、お祭りなんだからさ。」
「そういう浮かれた雰囲気も嫌い。勝手にやってるなら好きにすればいいけど同じノリを求められるの堪らなく不快。」
「…そっか。そうだよな。」
確かに弟は進んでイベントに参加するような奴じゃない。昨年も文句を言っていた気がする。参加ならまだしも、運営側となれば余計に苦痛だったのかもしれない。
「慣れ慣れしく声掛けられて嫌だったし、触られたり写メ撮られた時は殴りたくなった。気持ち悪いとか好き勝手言う奴もいるしさ。」
「気にすることないよ。お前は綺麗だったよ。」
「嬉しくない。」
「あはは…。」
昔からこいつは注目を浴びるのが嫌いだった。あんなに嫌がっていた女装をさせられ、そのせいで目立ってしまったから余計ストレスになっていたのだと思う。
「…俺も浮かれてたみたい。お前が嫌な思いしてるの知らずに、ごめんな。」
「兄貴は悪くないよ。」
「そう言ってくれてありがとな。後で写メ消しておくから、ごめん。」
「なんで。」
弟が目を開け、眉間に皺を寄せて俺を睨んだ。
「なんで!?あんたが言ったんだよ、俺が女装しないなら来ない、って!!」
「俺?」
…そうだっけ?
そう言えば、先週鍋を囲みながらそんなことを言ったような気がする。だけど弟が女装しようがしまいが来るつもりだった。
「そうだよ!!だから頑張ったのにあんたフツーに寝坊するしさ!!」
「お前さっき怒ってないって言ったじゃん。」
ようやく落ち着いてきたのに弟の神経を逆撫でしてしまったようだ。引き攣った笑みを浮かべて弟を宥める。
だけど、どうしよう。
俺の為に我慢してくれたことが堪らなく嬉しい。
「啓太、こっち来て。」
化粧もあらかた落ちた。不機嫌な弟の手を引いて席を立った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
184 / 228