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「ほら、お口直し。」
お茶か水を持っていればよかったのだが、生憎これしか持っていない。図書室の入り口付近のテーブルに置いたフランクフルトを片手に戻ってきた時、弟は同じ場所で棚に背を預けて座りこんでいた。一本差し出すと何も言わずに受け取り、口に含んだ。
「不味い。」
一口かじった弟が文句を口にする。すっかり冷めてしまっている上に、口の中が青臭いのだから仕方ない。遠くから微かに祭りの喧騒が聞こえ、図書室に設置されている時計の針の音がやたら耳に付く。弟と二人で並んで座り、黙々とフランクフルトを咀嚼した。
「ねぇ、なんであんなことしたの。」
半分ほど食べたところで弟が口を開いた。
「えっと…いつもの仕返し?」
「そうじゃなくて。なんで俺の咥えたの?」
こちらをチラリとも見ずに無関心を装って言う弟。
「…やっぱり女子の方が好き?」
横目で窺うと背を丸め、膝を抱えながらやや顔を俯けて食べかけのフランクフルトをじっと見つめていた。
「バーカ、女子にはそんなの付いてないだろ。」
こちらを盗み見ていた弟と目が合ったがすぐに逸らされた。気まずそうにもそもそとフランクフルトを口に含んだ。
「じゃあそういう趣味なの?」
「だーかーらー違うってば。もしそういう趣味なら化粧落とさせてないよ。先週言ったじゃん。男でも女でもどんな格好してても啓太が好きだよって。」
「そこまでは言ってない。」
「そうだっけ。まぁいいや。着替えて来いよ。」
「ん。」
俺にゴミを押し付け、弟が立ちあがった。数分後、制服に身を改めた弟が荷物を持って戻ってきた。
「おい、汚いよ。」
パンパンに詰め込まれたバッグをドサッと床に放り、俺の太ももに頭を預けてこちらを向くように横向きに寝そべった。
「寝る。3時半になったら起こして。」
「いや、文化祭3時までだろ。俺帰らなきゃまずいって!」
「駄目。居て。」
相当疲れているのだろう。まぶたが重いようで俺の服の裾を握りながら目を閉じる弟。目の下の血色がよくないことに気付いた。
「お前、片付けあるだろ?」
左腕に目をやると時刻はすでに14時45分だった。文化祭は15時までで、それ以降は各クラス片づけをする。13時半に一旦切り上げて閉会式をして、それが終わったら残りの片づけ。片付けが済んだクラスからホームルームをして解散、というのがこの学校の文化祭の流れだった。
「大目に見てくれるでしょ。」
そういうものか、と思いつつ弟の髪を撫でた。まるで安心したように服の裾を握る手が緩み、俺の太ももに軽く添えられた。片付けに教師は介入して来ない。閉会式に乗じてこっそり抜ければなんとかなるだろう。
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