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12ページ目番外編 2
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とにかく腹が立った。あんな奴誘わなければよかった。帰宅してベッドに入る前、決定した日程を振り返ってみた。そこで「電車の待ち時間」を考えていなかったことに気付いた。
「おはよ。」
翌朝、日程を練り直し早めに家を出た。
「…おはよ。」
社は朝が早い。教室内にはまだ生徒がまばらで数人しか来ていないが彼はすでに机について何やら難しそうな本を読んでいた。
昨日、あんな別れ方をしてしまったから声を掛けるのが躊躇われたが彼がいつも通りだったから少し安心した。謝ったら「別に気にしてない」、と素っ気ない一言。こいつを知らない奴は癇に障るかもしれないがいつもこうなのだと知れば何とも思わなかった。
「日程練り直してみたんだけど、どう思う?」
社に日程表を見せれば「昼飯どうするの」、と言われた。
「あと駅から目的地までの移動時間。」
「………。」
社なりに考えてくれていたのだろうか。助言に従い行き先を何ヶ所か削り、一カ所一カ所の滞在時間を増やした。昨日あんなに頭を悩ませたのに朝のホームルームが始まる前には完成してしまった。
無関心なのかと思ったけれど、そうでもなかったらしい。当日、社が下調べしてくれていたおかげで電車を乗り間違えなくて済んだ。本人がそう言ったわけではないからもしかしたら一度行ったことがあって知っていただけかもしれないが。
愛想はないが意外と頼りになるし、話せば分かる奴だ。社から話し掛けてくることは滅多にないけれど、俺から話し掛けることは多くなった。
「社、数学見せて、数学!!」
無言で問題集を俺に差し出す社の机にミックスフルーツを置き、社の手から問題集をもらう。
「サンキュ!すぐ返すから!!」
「社、俺も見せて!」
「おい、写したやつ俺に回せ!」
こぞって問題集を写す隣で紙パックにストローを刺し、ミックスフルーツに口を付けていた。相変わらず社のことは分からないが、頭がいいこと、球技が苦手らしいこと、学校でまずいと評判のミックスフルーツが好きだということは一年経過してようやく分かった。
あと、女癖が悪いことも。
中学の頃いい噂は聞かない、と聞いていたが高校に入っても同じだった。彼女をとっかえひっかえしているとか、、二股三股しているとか。確かに何度か女子と居る姿を見かけたが見るたびに違う女子だった気がする。顔のつくりが整っているからより取り見取りなのだろう。羨ましい、とは思うが妬むことはなかったし人の恋愛事情など特に関心がなかった。
だが、あれは看過できなかった。
ゴミ出し当番になってしまい、教室のゴミを集めて体育館の裏の倉庫へ向かう途中、社とクラスメイトの女子が顔を寄せている場面を目撃してしまった。俺の視線に気づいた女子は逃げるようにしてその場を去ったが社は平然と、何を考えているか分からない顔でこちらを見て立っていた。
「おい、今の奴彼女じゃねぇだろ?」
たまに聞く噂では今の彼女は隣のクラスの女子のはず。
「そ。違う。」
「なんで彼女じゃない奴とキスしてんの?」
「頼まれたから。友達裏切れないし一回キスしてくれたら俺のこと諦められるからしてほしいって言われた。」
モテる奴の考えることはさっぱり分からない。まるで何でもないことのように淡々と言うこいつに腹が立ってくる。
「それでしちゃうんだ、お前は!」
「別に減るものじゃないし。なんであんたが怒るの。関係ないでしょ。」
「確かに関係ねぇよ!!だけどお前もさっきの奴も、彼女を裏切ることになるだろ!!」
「他人とキスすることがどうして裏切ることになるのか分からないんだけど。」
「お前、彼女に同じことされて同じこと言えんのかよ!!」
「言える。誰と何してようが俺には関係ないし。」
「お前本当に彼女のこと好きなのかよ!?もう別れちゃえよ!!相手に失礼だ!」
これ以上話すことはない。ただ悪戯に首を突っ込んでも面倒なだけだ。それだけ言い捨てると倉庫に足を向けた。
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