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12ページ目番外編 3
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登校して席についたと当時に机にミックスフルーツが置かれた。顔を上げるとそこに居たのは社。
「昨日は悪かった。ちゃんと別れたから。」
「は!?」
それのみを言うと早々に自分の席へ引き上げようとしていた。
「待った待った、俺に分かるように喋って!」
腕を掴むと、相変わらずの無表情で俺を振り返った。言葉通りの意味で、俺の言う通りに彼女と別れた、ということだった。
「で、これは何なの?」
机の隅に置かれた紙パックを指して訊ねる。
「中澤好きでしょ?あげる。」
「いや、俺じゃなくてお前が好きなんだろ…。」
「別に好きじゃない。いちごみるくが売り切れてるから仕方なく。」
「………。」
美味しくないミックスフルーツはお詫びのつもりなのだろうか。もしかしたらこいつは俺が思っているよりも悪い奴ではないのかもしれない。彼女じゃない奴とキスしようとしていたことも、俺が別れろと言ったから別れたのも、自分の意思なく他人の言うことを鵜呑みにしているだけだ。
相変わらず社は彼女をとっかえひっかえしているらしい。俺は少しこいつが心配だった。
ある時から急にそれがぱたりと止んだ。ついに本命ができたとか、兄貴が好きだからという理由でフラれたとか、その他よからぬ噂もあったけれど一先ず安心した。このままだったらいつかこいつは刺されてただろう。
ようやく落ち着いたかと思ったらいきなり学校を休み、久しぶりに登校してきたかと思えば片方の耳にピアスを付けてきた。翌週、反対側の耳にもピアスを開けて来た時にはとうとうグレたのかと思った。
「お前、よくそれ許されたよな。」
両耳開けて来た時、社は職員室に呼ばれていた。この学校ではピアスは校則違反だから当然と言えば当然だ。戻ってきても両耳にはそれぞれ色の違うピアスが付いたままで、進級するまでクラスのゴミ捨てを一任することを条件に許可されたらしい。今日は俺がゴミ捨て当番で、いきなり「代わる」と言われても俺のすることがなくなるしゴミの量も多かったから一緒に行くことにした。
「宗教上の都合で、って優子さんが話つけてくれた。」
「優子さん?」
「俺の養母。」
「へぇ……え!?」
あまりに何でもないことのように言うから反応が遅れた。と、言うよりもそのまま流すという判断ができなかった。
「俺養子だから。」
「そうなんだ…。え、えっと悩み事あったら遠慮なく言えよ?聞くくらいならできるからさ!」
こういう問題は非常に繊細だから何を言えばいいか分からなかったのだが、その気遣いは不要だった。
「ん、大丈夫。今すごく幸せだから。」
社が、目を細めて笑った。社の笑顔を見るのは初めてだった。
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