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13ページ目 1 弟side
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毎週同じ時間、同じ場所で同じことをしている愛しい人に同じ言葉を掛ける。
「兄貴。」
改札前の柱に寄り掛かって本を読みながら俺を待っていた兄貴が顔を上げた。
「ん、来たか。」
本を閉じ、鞄にしまいながら一歩足を踏み出した兄貴の首には赤い鬱血跡がくっきりと2つ。
今週は木曜日が祝日だったからその時に俺が付けた。
自業自得だが、見えるところには付けさせてくれないから寝込みを襲ったところ、寝惚けた兄貴に殴られた。
日曜日がバレンタインだから、虫除け。兄貴はそんなことしなくても俺にくれる子なんかいない、と言うけれど自覚がなさすぎる。
元々気さくで親しみやすい上に、最近は色気が出てきた。鈍感だし、できることなら誰にも会わせずに閉じ込めておきたい。
「どこ行くの。」
「ちょっと寄り道。」
兄貴の後を黙って付いて行き、辿り着いたのは駅構内にある喫茶店だった。
1人でテーブル席に掛けていた窓際の女がこちらを見て小さく手を振る。兄貴はそいつに軽く手を挙げて応え、中に入ろうとした。
「待った。」
兄貴の手を引っ張って足を止めさせる。これだから自覚がないと言うのだ。
「なんでそいつが居るの。もう近づかないでって言ったよね?」
内田紀保。元兄貴と同じバイト先の女。彼女は兄貴に好意を抱いていた。兄貴がバイトを変えたのも俺の為に彼女との接触を避ける為だった。
「怒るなよ。内田さんは俺じゃなくてお前に用事があるんだってさ。」
俺に向かって苦笑いする兄貴に訝しげな目を向ける。
「俺?…あ、ちょっと!」
兄貴に手を取られ、引っ張られるようにして中へ入った。
「ごめん、待った?」
「優斗くんも弟くんも久しぶり!今来たところだよ。」
「なら良かった。啓太、お前何でもいいよな?ここに居て。」
「は?ちょっと待ってよ…。」
兄貴はさっさとカウンターへ行ってしまい、彼女と2人その場に残された。
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