アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1年A組前廊下
-
入学式が終わりぞろぞろと教室へ向かう列の中でも僕は異質だった。
宝石の中に混じった石ころのように違和感で異物のようだった。中学校からの持ちあがりが僕以外にも数人石ころはいたが、彼ら彼女らはすぐに表面をはがしきれいな輝きを放っていた。
馴染んだ中であっという間に浸透するクラスの輪。
僕だけ。
僕だけ違う。
違和感をぬぐいとれないのは自分の存在。担任の教師が何かを言っているが僕の頭の中には入ってこない。
遠くでスピーカーがなっているように不明瞭な言葉がかすかな意識を保つ手段となる。
ひとりきりで座り周りとの壁を感じながら黙りこくる。
もし自己紹介などという事が起これば息を止めてしまいかねない。幸いな事になかった。だがよく考えれば僕を押し出す最初のチャンスだったんだろう。
自分との溝を深くする必要はないのに、なんだかその分損した気がする。
アットホームなクラスにこれ以上い座れずトイレに向かう。
廊下にも仲間同士でつるんでいる生徒達はたくさんいた。そのどれもがみじめな僕を嘲笑っているような被害妄想が沸き起こる。
耳鳴りのような談笑の嘲笑。梟のごとし忌み嫌われる視線。
ぶつかってしまった。慌ててすみませんと言おうと顔をあげた先には端正な男の顔立ちがあった。制服ではないので先生のようだ。
「いいえ大丈夫ですよ」
先生はにこりと笑う。柔らかそうな髪の毛が揺れた。
春解けの光見たいなやさしい笑みだ。
随分そんな笑顔を向けられていない様が気がした。灰色の世界に日だまりが飛び込んできたみたいだ。
こんな些細なことで喜べる時が来るとは思っていなかった。
「君、大丈夫ですか?さっきから顔色が優れませんが」
初対面の僕を許してくれただけではなく気遣ってくれた先生。
異世界に放り込まれたばかりの僕は恐怖で喉が震えてしまい、ろくに言葉も返せなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 17