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1年A組教室
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混じれないものはどこまで行っても混じれない。
入学してから数日が経った。
周りの連中は確かにだがゆっくりとした動きで壁を固めていく。
僕に見せつけるようにゆっくりと、視認できる速さで確実に僕の命を締め付ける。いっそ殺してくれと言いたくなるような孤独だった。
朱に混じれば赤くなる。ならないなれない松茸の中にシメジがあっても決して松茸にはなれないんだと理解できるようになってきた。
理解と願望はすれ違う。わかっていても皆の中で笑えるようになりたいじゃないか。
学級委員長を決める時間になった。
誰もそんな役職に就きたがらないせいで教室は沈黙で埋められている。担任が苛立った様子で「誰が立候補してくれないか」と無謀なお願いをしているが、もちろん誰も手を挙げない。
とにかく今はこの場から早く帰りたい。僕だけの世界に帰りたいよ。痛々しい静寂の中で
頑張れば、なんとかなるかな。
気がつけば僕は手をあげていた。無口でおとなしい僕が手をあげたせいか少しだけ教室に活気が戻る。「それじゃあお前に頼むぞ」と面倒事から解放された教師は嬉しそうに言う。
厳かな拍手が僕を包みこんだ。
なりたくもない学級委員長になって。馬鹿みたい。こんなことしたって、何にもなれないのに。だけど少しでも。面倒事を押しつけるためだとしても、認めてくれたんだなって思いたかった。
副委員長はあみだくじで決まった。女子の澤田さんだ。よろしく、と頑張って笑顔であいさつしたけど無表情で無視されちゃった。
これから僕はどこへ向かうんだろう。そんな不安がよぎった。
学級委員長がこれから仕切ってくれと頼まれ僕は壇上に上がった。
澤田さんも隣に並ぶ。さあ。頑張って「各自なりたいい委員会に挙手してください」っていうんだ僕。
「かっ各自なりたい、委員会に…きょっ挙手してください…っ」
うん、言えた。ちょっと噛んじゃったけど。頑張ったね僕。ちょっとだけ世界が明るくなったように思えた。この小さな勇気が自信を与えてくれるような。
思い切って顔をあげてみる。見た瞬間、ぐにゃりと視界がゆらいだ。
無機質な目。灰色の目。金属みたいな冷たい目。
それらすべてが僕に突き刺さる。
嫌だやめて。
僕をそんな目で見ないで。
距離が近い分恐怖やその冷たさが一層強くなって恐怖と化す。視線って凶器になるんだね。身をもって体感している。息が荒くなってきた。
ちらりと横を見る。
澤田さんの人形みたいにぽっかり空いた目が、僕をとらえている。どこまでも広がる灰色の世界に僕は吐き気を覚えて口元を手で押さえた。
もう駄目だ。僕は耐えられない。
心の敗北を認めた瞬間全身から力が抜けて目の前が灰色になった。
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