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下駄箱
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学校へ行った僕は下駄箱で想定通りの光景を目にした。
上履きがない。学校指定のあの新品の上履きが見当たらない。
どこにいったのかなんて明白だ。分かっていたことだが僕の中にある芯がすぅと冷えた。
ちらりと辺りを目に向ける。
いつもの平凡な登校風景だったがいつにもまして無愛想な色を帯びている。彼らは上履きのない僕には気づかないで日常を過ごす。悲しさなんてない。失望だけだ。
一人が泣いていてもその他が笑っていれば楽しいと認定される。
一人がものをなくしてもほかの人が持っていれば可とする。
ほかの人が了承すれば僕の気持なんて無視されるんだ。
だれが持って行ったかなんて重要じゃない。
隠されたということが大事なんだ。僕は否定された。ついに来るべき時が来てしまった。彼らの機嫌を損ねた覚えはない。何もしていないからだろうか。
人間の大衆は自分たちになじめない異物を放り出す習慣がある。
それが僕なだけだ。何も悲しむことはない。
なのに、なんで唇をかみしめてるの?
どうしよう。僕はどうすればいいんだ。
最近自分の問いかけてばかりだ、悩んでるのは自分なのに聞いても答えが返ってくるはずないのに。
「あれ?そこの君そろそろ授業が始まりますよ?」
空野先生だ。
後ろを振り返るとほのぼのとした雰囲気の先生が立っている。僕はどんな顔をしていたのだろう。
先生は目つきをやや厳しくして僕の下駄箱の中身を見つめている。
「先生…」
「職員室に予備があるだろうから持ってきてあげます。だからそんな悲しい顔をしないで?」
ね?と悲しそうな笑顔を浮かべた先生にこくんっと頷く。
やさしい先生にまで心配をかける僕ってなんだろ。
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