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2年C組
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空野先生と思いを通じ合わせて数ヵ月後、僕は進級した。
1年から2年へのステップアップ。クラス替えが行われた。人間関係がおおまかにリセットさればらばらにされる。好きな友人と別れるかもしれない悲しい出来事だろうが、僕にとって好都合もいいところだ。
これはチャンスだ。
先生と出会ってから自分は変わったんだと証明する初めのきっかけ。この場を持ってしてかわらなければ僕は一生僕のままだろう。停滞したままの人間に未来はない。
かわる。僕のためにも先生のためにも。
見せるんだ。もう1年生の僕じゃないと。
新しい自分を、さらけ出すんだ。
「えーじゃあ自己紹介していけー」
どういう仕組か2年生にあがるとどうやら担任教師の好き嫌いで決まるようだ。次々とテンプレートな自己紹介をしていく人たち。僕の番が近付く。不思議と緊張はしなかった。
先生が背中を支えてくれているみたいだ。
昨日の放課後一緒にコーヒーを飲みながら先生は言った。
「彼方。これはいいきっかけだよ。いじめられていた君じゃないってことを証明しておいで」
駄目だったら泣いて、よかったら一緒に喜びあおう。
励ましてくれた先生を思い出す。本当に先生は僕が失敗してもまたあの笑顔で受け入れてくれる。それだけで十分だ。先生だけが僕を見ていてくれたらいいんだ。
でも先生が僕に教えてくれたこと。優しさ勇気努力。いっぱい教えてくれたことを無駄にしたくない。人を怨むな。人を蔑む。人を信じる。
先生の愛を、無駄にしたくない。
僕はそれにこたえたい。
くれた全部を返してあげたいんだ。
「えーじゃあ次の生徒」
「えっと1年A組から進級しました彼方って言います!みんな気楽に彼方って呼んでください!趣味は絵を書くことです!皆と楽しく一年を過ごしたいです!」
先生の笑顔をイメージしてにこっとする。うまく笑えてるかな。
周りの灰色の視線が少し色を帯びた。もうあの人形みたいな目つきじゃない。僕を見てくれている。
成功したんだって、確信できたよ。
ほら、簡単じゃないか。やってみれば案外単純なものなんだ。
先生、僕変われましたよ。
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