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職員室
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次の授業が理科室で行われるので僕はうきうきと職員室へ足を運んでいた。堂々と先生に会えに行ける時間。クラスメイト達は理科の準備をこのんで行う僕を変な目で見たが、知ったことではない。
多少曝されるのは覚悟の上だった。先生と一緒にいられる時間が少しでも増えるなら。
僕はどんなお仕事でもするし、できることならなんでもする。
今日も軽くスキップをしながら廊下を歩いていると、高い声に呼び止められた。
なんだよ僕は先生に会いたいんだ。
ちょっぴり不満げに頬を膨らませて振り返る。きつい香水ににおい。うっとむせそうになる。
「貴方ここの生徒?」
金髪を豊かにカールさせた女が偉そうな口調で僕を見下ろす。腕組をして豊満な胸を押し上げすれ違う男子の純粋な性欲をあおることを目的としているようだ。
性的な目で見られたいのか。そう思われても仕方がない露出度の服に顔をしかめる。
神聖なる学び舎には色々輝きすぎている女性だ。
「そうですけどどうかしましたか?」
「ああちょうどよかった助かったわ。理科担当の空野って先生いるでしょ?案内して頂戴」
今何て言ったこの女。
礼儀もかなぐり捨てて狼狽した。
落ち着いた物腰の先生とは接点のなさそうな女性の口から、その名前が出てくるとは。ぜひとも関係性を問い詰めたい。
たとえこの女の綺麗な肌にかみ傷を残そうが、先生の何なのかしっかり聞きただし、そしてそのあとは僕が。
「ぼーっとしないで。なんなら職員室に連れて行きなさいよ」
しびれを切らした女がこつこつと足を鳴らす。僕はこくんっと頷いた。ほんとは納得してないけどここで無視しちゃったら後々先生に迷惑かけちゃうかもしれないから。
すっかり重くなった足取り。女をひきつれているせいか周りの視線がいつも以上に集まっているきがする。
彼女はそれ以上何もしゃべらない。僕からも話しかけることはない。いっぱい聞きたいことはあるけど、どうせ答えてくれないだろうから。
職員室前についた。
御苦労さま、と棒読みなお礼をして女はじっとドアを見つめている。どうしたんだろ。中に入らないのかな。不思議そうに見ていたのがうっとおしかったのか横目で睨まれた。
「ちょっとあなたが呼びなさいよ」
「え?なんで」
「なんでもいいからっ!」
早くしなさいよ!と癇癪を起した女性にため息をつく。こんな大人にはなりたくないな。自分じゃ何もできない。まるで子供じゃないか。本当にもう。
いうことに従ってやることにする。
僕は扉を開けて近くにいた先生に「空野先生おいでですか」と聞いてやった。遠くのほうで人が立つ気配を感じ、先生が近付いてきた。先生がこっちにくる姿を見るだけで心臓が痛くなった。
「あれ彼方どうしたんだ―――」
「そらのっ」
彼女は無邪気な笑みを浮かべたまま先生に抱きついた。
巨大なバストがたわわに揺れて先生の胸板に密着した。あの濃密な柔らかさに堕ちてしまったらどうしよう。馬鹿な不安が脳裏を横切った。
だが先生はクラスメイトのようにでれでれ鼻の下をのばさなかった。驚いたように彼女の体を抱きとめる先生。ムカつくけど絵になっていた。身長さもちょうどいい。僕なんかのチビとは比べ物にならないプロポーションだ。
「ゆりかっ?」
「空野会いたかったよぉ…最近メールも電話も返してくれないのっ?」
命令を下していた女王様とは別人かと疑う甘い声。恍惚とした蜂蜜を想像させる甘美な声音で先生の頬をなぞった。やめて。これ以上先生が誘惑される姿なんて見たくないよ。目を抑えかける。現実がこんなにもつらいなんて、久しぶりの欺瞞だ。
「なぜ今頃になって私のもとに来たのですか?」
「あのお話の続きしようかとおもって」
あの話ってなんだろう。僕には見当もつかなかったが先生には思い当たる節があるようで、眉間に深くしわが寄った。
「………ここじゃ場所が悪い。応接室に行きましょう」
「うんっ」
「すみませんが彼方君。少し遅れるとみんなに伝えておいてくれませんか」
「あっはいっ」
返事をすると先生とゆりかは腕を組んだままその場から去って行った。
取り残された僕が感じたのは単純な疑問と果てしない、嫉妬。
とてつもなく嫉妬した。
先生と堂々と腕を組めるゆりかに。親しげに抱きつける間柄に。深い秘密を共有し合う関係性に。
先生と仲がいいのは、僕だけで十分なのに。二人もいらないよね。先生は僕のもので僕は先生のものなんだから。ゆりかがもし先生の彼女だったら、僕は壊れるんだろうか。
その日先生は理科室に姿を現さなかった。
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