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3年A組
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そうして僕はあっという間に2年を終えて最高学年へとステップを踏んだ。
いじめられることもなく過ぎ去った2年生は驚くほど短くて。楽しい時は早くすぎるとはこのことなんだね。1年はあんなにも遅かったのに。
先生と話している時間のほうがもっと短かった気がする。
あと一年。この年がすぎれば僕は卒業する。そうしたら僕と先生を縛るものはなくなるんだ。
対等になった関係の上に何を築けるんだろう。今以上の愛か困難か。
僕たちの仲を引き裂く切り裂きジャックがいるとするならば、世間という社会だと思う。だからどうした。倫理観で縫われても傷口なんてすぐに開いて見せる。
血が出ようが肌が焼き切れようが僕は絡まったまま先生のもとへ走るだろう。
愛のためなら目玉でも腕でもさあなんでも持っていくがいい。
とまらない愛の情熱は切り裂けないだろう。血液の下で燃えたぎるこの熱いイマジネーションはだれにも止められないんだ。
ひどい目に会おうがもう僕は変わらない。弱虫な僕には戻らない。先生を一途に思うのが今の僕なんだから。退化する代償は重いのに利益はない。誰がリセットボタンを押すんだろうか。
今を生きてる僕は既に過去を忘れかけていた。
澤田さんなんてもうどうでもいいよ。僕をいじめた人なんか知るもんか。最近女子のターゲットにされているようだが助ける義理も恩義もない。先生みたいになりたいけど彼女を助ける必要性はなかった。
なんて哀れなんだ。
因果応報とはまさにこのことか。
蔑む僕を澤田さんはやがてあのときみたいにぽっかりあいた目で見つめるようになった。なにもない。彼女にはもう穴を埋める感情が欠陥している。昔の僕もこうだったのかな。
月が地球の周りを、地球が太陽の周りを回転し続けるように僕は先生の周りから一センチたりとも離れたくない。
僕の愛は真実のもの。先生だけのもの。
人間としても立派な先生に釣り合うような人間になりたい。先生みたいに変わるチャンスが見つからない生徒に救いの手を差し伸べたい。先生はいつしか僕の夢そのものになっていた。
夢は薄れない。僕の中でずっとぐるぐる回っていく。
そう伝えると先生は何とも言えない顔で「私なんかが貴方の夢になっていいんですかね」と戸惑ったけど、あたりまえじゃないですか。僕はあなたしか見えない。
キラキラ光る水面に沈んだ一粒の夢が、先生なんだから、僕にとって不満はないし当然のことともいえる。
大好きな人を目指したいって思うのは普通じゃないか?
先生を反映する生き方が理想だった。あんなに包容力がある人間になれるならなりたい。なってみせる。今度は僕がお返しする番なんだ。
僕は教師を目指すことにした。得意な国語を狙っていこうと思う。
語学力を身につければ言葉に重みが増すだろうから。大好きな国語も学べるしまさに一石二鳥だ。
そうときまればさっそく実行。大学を選びあとは猛勉強をするだけだ。
シャーペンを握った僕の周りに人が集まる。
僕に勉強を教えてもらうためだ。みんなでわいわい楽しくやっていると教室のドアがひとりでに動いた。自然と静まり返る室内。ひょっこり顔を出した人に、僕の瞳孔が開いた。
「先生っ」
「彼方君ですか…」
僕はうれしくてシャーペンを放り投げ先生に駆け寄る。抱きつきたいけど周りの目があるから駄目だ。もう、なんでみんないるの?
「…あっいえ…なんでもありませんよ…?勉強熱心ですね。頑張ってください。では」
こんなことが多くなった。
先生は何か言いたそうに口ごもるが結局何も言わずに帰ってしまう。二人の時間は減ってしまった。僕のせいだと自覚してる。でもこの修練の期間が過ぎればまた二人仲好く出来るって信じてるよ。
先生。僕が立派なあなたになれるまで待っていてくださいね。
それはそうと、先生また細くなられましたが大丈夫ですか?
心配はしていたが勉強の忙しさに連れさらわれ僕の世界の片隅に流されてしまっていた。
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