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夏風邪と欲求
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「……浩之」
声を聞いただけで 彼だと気づいた。
元恋人。近藤 浩之 (コンドウ ヒロフミ)。
「久しぶり、元気にしてたか?」
あの頃と何も変わらない浩之。
だけどただ一つ、変わったことがある。
「あぁ。そうだ…、結婚おめでとう」
彼の指にはシルバーのリング。
ちょっと丸くなったのは 幸せ太りだろうか。
「…ありがとな。あと、ごめん」
彼か何に対して謝っているのか、僕にはわからない。
男同士の関係なんて いずれ終わりが来るに決まっている。
わかっていて付き合っていたんだ。
謝られても虚しくなるだけ。
「別に…平気だ」
正直、別れを告げられた時はショックだった。
信頼して、お互い愛し合っていたはずだった。
どこで道を間違えたのだろうか。
どうして彼に 別れを告げられたのだろうか。
毎日考えても仕方のない事ばかり考えて生きてきていた。
相沢に出会うまでは。
「…あのさ、信幸……」
浩之が何かを言いかけた時。
「俺の佐伯さんになんか用ですか?」
現れたのは 明らかに不機嫌な相沢。
「あ…あいざ…んッ」
顎をつかまれ 強引に口づけをされる。
こじ開けるように侵入してきた舌が
荒々しく僕の舌を絡めとる。
段々 足に力が入らなくなって
相沢に腰を支えられながらキスをした。
「んッ…んぅ……ッは…」
解放された時にはもう 息が上がってしまっていた。
「帰りますよ、佐伯さん」
腰に手を回され ぴったりと密着させられ、
夜の街を歩き出す。
相沢の体温が 今はとても心地いい。
「…ちょ…ちょっと、待ってくれ!!」
後ろからは浩之の声がする。
相沢より少し低い声。
僕が…かつて好きだった声。
歩みを止め 相沢はゆっくりと振り返る。
「佐伯さんはもう、俺のですから」
今はもう
相沢の声に 胸が熱くなるばかりだ。
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