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思い出と距離
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目を開けると 昨日と変わらない天井が目に入る。
けれど、隣に相沢の姿はなかった。
…また、嫌な夢を見た。
浩之に会ってからというもの、
彼の夢をよく見るようになった。
別にやましい気持ちがあるわけではない。
浩之の結婚は祝福しているし
そんな幸せな家庭を壊したいなんて思わない。
浩之とはもう会わない。
それが相沢にとっても
僕にとっても一番だと思う。
好き、相沢。
**
あの後 相沢の匂いに包まれながら
二度寝をしてしまった。
風邪もだいぶ 良くなった。
「おはよう…」
リビングへ行くと着替えをしている相沢がいた。
風呂上りなのか髪の毛からは雫が滴っている。
「相沢…」
相沢に触れようと 手を伸ばした時だった。
「…出ていって」
急に聞こえた 低い声。
こちらを向いた相沢の顔は
大きな怒りに満ちていた。
冷たい視線。
一直線に結ばれた口。
え…?
わけがわからなかった。
僕、何かした?
嫌われるようなことした?
相沢へ触れようとして伸ばした腕が
行き場をなくしている。
「ぁ……相沢…?」
精一杯に絞り出した声は相沢にかき消される。
「もう、終わりにしましょう」
相沢は僕から目を逸らさない。
だけど相沢は 僕を見ていない。
相沢の目には僕がしっかりと映っているのに
彼はどこか遠い目をしている。
「な…んで…? や、…いやだ」
子供のように首を振りながら 必死に拒絶する。
ここで相沢の言葉を受け入れたら
また同じことの繰り返しだ。
「…そんなに欲求不満なの?」
軽蔑するように放たれた言葉。
相沢の表情は 一切変わらないままで。
「…ち、ちが……そんなんじゃ…」
僕の否定は大して意味を持たなかった。
相沢にはこの言葉すらも届いていないのだ。
「…だったら他のやつにヤって貰えば?」
棘のある相沢の言葉は
容赦なく僕に突き刺さる。
…そんなんじゃ、ない。
相沢以外となんてできない。
相沢にしか欲情しない。
相沢じゃなきゃ いじめられたくない。
相沢にしか 触られたくない。
いくら心の中で否定しても 届くはずがないと
わかっているけど。
「ていうか、俺が課長みたいな人に
本気になんてなるわけないでしょう?」
相沢の言葉は止まらない。
僕の目にも涙が滲む。
「“遊び”ですよ、最初から」
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