アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
思い出と距離
-
佐伯さんに吐き捨てた言葉は棘だらけで。
その棘は自分自身にも傷をつけた。
佐伯さんが目の前で泣いている。
抱きしめたい。
抱きしめて、全部俺のものにしたい。
だけど俺にそんな資格はないんだと
今さら気がついた。
佐伯さんの中にはまだ、アイツがいる。
それが許せない俺は やはり心が狭いのだろうか。
“遊び”
俺はそう言ったけど
本当はそんなこと思ってない。
確かに佐伯さんを好きだった。
好きで好きで 仕方がない。
今だって、好きだ。
だけど自分でも自分自身がわからなかった。
今まで付き合った人には
こんなに嫉妬することもなかった。
適当に遊んで 飽きたらおしまい。
そんな奴らばかりだったからだ。
だけど、佐伯さんだけは違う。
俺のことだけを見ていてくれた。
俺だけを求めていてくれた。
きっとそれは普通なんだろうけど
それが俺にとっては ひどく嬉しかった。
だから 佐伯さんの中に誰か別の奴がいることが
どうしても許せなかった。
好きだから、許せなかった。
嫉妬は人を狂わせると言うけど
本当にその通りだと思う。
ドロドロした、真っ黒な感情。
腹の底からふつふつと湧き上がる思い。
こんな気持ち、初めて知った。
「さよなら」
一言そう告げて部屋を出ると
予想以上の悲しみが襲ってきた。
自分から終わらせておいて
こんなのはおかしいのだろうか。
けれど 胸の痛みは治まらない。
あぁそうか。
これが、恋ってやつなんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 420