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アイのカタチ
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「……ふぅ」
仕事が終わったのは21:00を回った頃。
パソコンを長時間見つめていた目は
少し充血している。
それだけでなく 朝から泣いていたので
瞼は腫れぼったくなっていた。
窓に映る僕の顔はひどいものだった。
…早く帰って、今日は寝よう。
そう決めた僕は 帰り支度をして、会社を出た。
夜空には満月が浮かんで 僕を照らしている。
蒸してはいるけど 悪くない夜だ。
今日は歩いて帰ろう。
そう、決めた時。
「え……」
人ごみの中でも はっきりとわかる。
よく知っている背中。
僕の好きな横顔。
僕を包み込む大きな手。
僕を見つめる優しい目。
僕の好きな人。
その隣には 綺麗な女性。
傍から見ればお似合いのカップルで
僕にとっては決して知りたくない現実だ。
「ぁ…あ…いざわ…」
涙で目の前が滲む。
足は自然に動き出していた。
病み上がりで重たい体を必死に動かす。
「…はぁ……ッ…はぁ…」
人ごみを掻き分けて彼を追いかける。
早足で駅へ向かう人と何度もぶつかり
迷惑そうな顔をされた。
でもここで止まれない。
ここで諦めたら 本当に終わってしまう。
それでも段々遠のいていく彼の背中。
待ってくれ。
行かないでくれ。
「ッ……良太…!」
初めて呼んだ 彼の名前。
名前を呼んでも 彼が戻ってくるわけじゃない。
だけど、どうか気がついて。
僕に、気がついて。
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